福井県文書館では「学校向けアーカイブズガイド」を作成し、教材として活用できる福井の地域資料の情報や画像をWebで公開しています。本コラムでは、アーカイブズガイドの紹介とともに、新学習指導要領を見据えた今後の文書館の役割について考えていきます。
2018年に高等学校の次期学習指導要領(以下、新指導要領)が告示されました(2022年度入学生から年次進行で実施)。新指導要領で新たに設けられた科目「歴史総合」および「世界史探究」「日本史探究」では、いずれも「諸資料を活用」し、課題を追究したり解決したりする活動を通して、知識および技能、思考力、判断力、表現力を身に付けることが示されています(1)。
例えば必修科目の「歴史総合」では、大項目A「歴史の扉」に「歴史の特質と資料」という中項目が設けられています。また選択科目の「日本史探究」では、原始・古代、中世、近世、近現代それぞれの大項目に、「歴史資料と近世の展望」のような形で中項目が設けられており、資料を読み解いて仮説を表現することを求めています。
さらに新指導要領に先立って、2021年から実施される大学入試共通テスト(2)においても、2017・18年に行われた試行調査では、文献・図版・統計など諸資料の活用を求める出題が大幅に増加しました。このことからも、歴史教育における資料活用能力の重要性が高まっていることがうかがえます。
『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 地理歴史編』(以下、「解説」)には、博物館や図書館、公文書館等いわゆる資料保存利用機関との連携について、以下のように記述されています(3)。
このように、資料保存利用機関と学校教育との連携を通して、資料の保存・保全などの努力が図られていることを子どもたちに気づかせ、地域の文化遺産を尊重する態度を養うことが強調されています。
県内の様々な資料を保存する福井県文書館としても、この点は特に重視しているところです。これまでも、出前講座(4)や郷土新聞づくりのサポート(5)など様々な形で学校教育との連携を推進してきました。とはいえ、中高生が実際に文書館を訪れることは少なく、出前講座なども年間を通してそれほど多く実施しているわけではありません。では、子どもたちに地域資料に親しんでもらうために、他にはどのような支援があるでしょうか。
前掲の「解説」には、「資料の取扱い」について、以下のように記述されています(6)。
上記の通り、近年全国の公文書館等ではデジタルアーカイブが充実してきており、多くの所蔵資料をインターネット上に公開するようになりました。福井県文書館・福井県立図書館等が運営する「デジタルアーカイブ福井」でも、古文書・古典籍・歴史的公文書・写真等の画像データをインターネットで公開しています(2020年3月末時点で約41万7,000画像)。
では、学校教育の現場で実際に「使える」資料とは、どのようなものなのでしょうか。文部科学省初等中等教育局教育課程課の藤野敦氏は次のように指摘しています(7)。
藤野氏は、学校教育現場で使える資料とは、生徒が自身で活用しやすい資料であること、そのために教員が生徒の状況を踏まえ事前に資料を「加工」する(教材化する)必要性を指摘しています。しかし、「膨大なデジタルアーカイブの中から授業で使えそうな資料を探し出し、それを加工し、さらに文書館に申請したうえで使用する」といった一連の作業は、多忙化を極める学校の先生方にとっては大きな負担となってしまいます。
そこで福井県文書館は、少しでも教材づくりの負担を軽減できるよう、Webサイト上で「学校で使える資料」というページを設け、教育現場向けに提供可能な資料の情報発信を行っています(8)。例えば、「地券」や「すごろく」など貸出し可能な資料の大型複製シートや、過去の文書館展示で使用した写真展示パネルをリストアップし紹介しています。
さらに2017年度からは、文書館所蔵資料の中から、学校の授業で使えそうなものを解説シートとしてまとめた「学校向けアーカイブズガイド」を公開しました(9)。次章で詳しく紹介していきます。
学校向けアーカイブズガイド(以下、アーカイブズガイド)は、現場の先生方が授業を進めるうえで、生徒の理解の助けになるような地域資料の紹介を目的として作成しました。文書館所蔵資料を中心として、福井に関する地域資料の中で授業に活用しやすいものをピックアップし、画像と解説文を1枚のシート(PDFファイル)にしました。2020年7月末時点で、近現代の資料を中心に40件公開しています(アーカイブズガイドの一覧はこちら)。シート上では、資料の一部分のみの紹介となっていますが、「デジタルアーカイブ福井」のリンクが埋め込まれていますので(図1参照)、そちらで資料の全体像を確認することができるようになっています(10)。
利用する場合に当館への申請は必要ありません。編集・改変も自由で、ダウンロードしたPDFファイルの画像をコピーして、授業プリントやパワーポイントのスライドに貼り付けることも可能です(11)。
ここで、地域資料を授業で扱う利点について述べておきます。地域資料は、子どもたちに歴史を身近なものとして感じてもらうだけでなく、教科書で語れないエピソードを補足できるという利点があります。
例示した「五榜の掲示」(12)は、今立郡池田町西角間で庄屋などを務めた飯田忠光家に残されており、実際にその地域で掲げられていました。明治新政府の方針が、福井にも広く波及していたことがうかがえます。さらに面白いのは末尾に発行元が「敦賀県」と記されているところです。当時(明治元年、1868年)は廃藩置県以前のため、敦賀県はまだ成立していないはずなのに、いったいどういうことなのでしょうか。「敦賀県」の部分をよく見ると、表面に削られた跡があります。当時はその地域を管轄する行政庁が変わると、発行元を削って書き換え、繰り返し使用していたようです。
このように、「五榜の掲示」のような教科書に掲載されているおなじみの資料であっても、その資料と地域(福井)の関わりを知ることで、子どもたちは歴史をぐっと身近に、そして具体的なものとしてとらえることができるのではないでしょうか。
筆者が教育現場で勤務していた頃は、このアーカイブズガイドの存在を知りながらも、恥ずかしながらほとんど授業で活用していませんでした。しかし、文書館に勤務するようになり、改めてアーカイブズガイドをじっくり見てみると、「文書館にはこんなに使える資料があったのか!」と驚きの連続です。同時に、「学校の先生方に広く知ってもらい、ぜひ授業で使ってもらいたい!」「子どもたちに福井の資料をもっと身近に感じてもらいたい!」という気持ちが沸き上がってきました。次章では、アーカイブズガイドの授業での活用例を紹介していきます。
それでは、授業ではどのようにアーカイブズガイドを活用できるのか、具体例を挙げて紹介していきます。とはいっても、筆者が実際に授業で使用したわけではありません。あくまで、「このように使えるのではないか」という提案です。対象とする教育段階は高校の日本史を想定していますが、資料によっては中学校や小学校への応用も可能ですし、「総合的な探究の時間」や学級活動などでも使用できると思います。
筆者は授業をする際、導入場面でいかに生徒の興味・関心を引き出すかを意識していました。例えば、その日の授業に関連する写真や絵図などの資料を最初にスクリーンで示し、「これ、なんだと思う?」などと生徒に問いかけていました。というわけで、まずは導入場面で使える写真や地図資料を紹介していきます。
図2は1902年(明治35)4月の東郷小学校の落成式の写真で、教育勅語を奉読している場面です(13)。授業では、近代の教育を扱う際の導入場面で提示し、「何をしていると思う?」「なぜ日の丸が掲げられているの?」「なぜ多くの人が頭を下げているの?」など、資料を通じて様々な問いかけができます。教育勅語が地域(福井)の学校教育にも浸透していることがよくうかがえる資料だと思います。
次の図3は何の写真でしょうか?若い女性たちが歌っているようですね。後ろには巨大なだるまが見えます。この写真は福井で活躍した歌劇団「だるま屋少女歌劇」の写真です(14)。1928年(昭和3)7月、福井駅前に県内初の百貨店・だるま屋(現西武福井店)が開店しました。だるま屋少女歌劇は、別館「コドモの国」がオープンした際に県内の少女たちを採用・養成して発足した歌劇部です。県内出身の少女たち約30名が在籍し、1931年(昭和6)11月から36年7月まで、月ごとにプログラムをかえながら、公演を行っていました(15)。
授業では、大正~昭和初期の市民生活を扱う際の導入として使用します。だるまのインパクトも大きいですし、当時の女性たちの活躍も示すことができる格好の素材だと思います。教科書に掲載されている「東京銀座通りを歩く女性」や「大阪梅田のターミナルデパート」などの写真でもよいのですが、より身近な「福井のデパート」を事例とすることで、当時の人々の消費生活がさらにイメージしやすくなるのではないでしょうか。
続いて図4の地図資料です。この地図は「日露戦争早見地図」といい、日露戦争当時の1904年(明治37)に発行されたものです(16)。実際に使われていた地図を用いることで、日露戦争をよりリアルな出来事として感じさせることができるでしょう。この地図の特徴は全国各地の師団や連隊の所在地が描かれている点です。福井県では、鯖江と敦賀に確認できます。特に鯖江歩兵第三十六連隊は日露戦争の中で最も熾烈な戦闘といわれる旅順包囲戦・奉天会戦に参加したことで多くの死傷者を出しています(日露戦争における福井県兵士の戦没者比率の大きさは全国4位)。
以上、3点の写真・地図資料を紹介してきましたが、これらの資料はいずれもインパクトがあり、かつその時代を象徴するものであるため、生徒の関心・意欲を引き出し、思考させるきっかけが多く盛り込まれています。まさに導入場面で用いるのに最適の資料ではないでしょうか。もちろん、ワークシートを作成してじっくり考えさせてもいいと思いますし、学習後の補足資料として用いることもできます。いずれにしても使い勝手の良い資料です。
「解説」には、資料の活用について次のように記述されています(17)。
生徒たちは、普段教科書を中心に学習していますが、「教科書が何を基に書かれているのか」、意外と見落としがちです。ここでは「地券」を用いて、生徒に「資料を基に教科書の記述がつくられている」ことを実感させる授業案を紹介します。
地券は、数ある地域資料の中でも最もポピュラーな存在といってよいでしょう。教科書や資料集にも写真が掲載されていますが、せっかくなら福井の地券を授業で使ってみてはいかがでしょうか。もちろん、実物をお持ちの方はそれを使うことを推奨しますが、お持ちでない方はぜひ文書館の“デジタル地券”を活用してみてください。
図5は遠敷郡世久見村(現若狭町)の桜井市兵衛家に残されていた地券で、1873年(明治6)の地租改正条例以前に発行された壬申地券と区別して、改正地券とよばれます(18)。ただ、学校の授業で扱う際には、単に「地券」としておけばよいでしょう。
「デジタルアーカイブ福井」には数多くの地券が登録されていますが、あえてこの桜井市兵衛家の地券をアーカイブズガイドに選んだ理由は、「裏面部分」の紹介もしたかったからです。地券の表面は教科書や資料集に掲載されていますが、裏面まで掲載されているものはほとんどありません。しかし、この裏面を読み取れば、「土地の所有権」が国家によって明確に保障されていることがわかります。さらに「山野栄蔵」から「桜井兼吉」へと「所有権の移転」が行われていることも読み取れます。地券裏面の記述は、国家が国民個人に「権利」として土地所有権を認めた証なのです(19)。言い換えれば、近世以前のような「封建的領有制」が、地券公布によって解体されたことを意味します(20)。それでは以下、授業案の紹介です。
地券の画像はアーカイブズガイドにリンクされている「デジタルアーカイブ福井」からダウンロード、印刷できます。A4かB5サイズ横向きで印刷するとよいでしょう。1単位時間(50分)の授業の流れは以下の通りです。
学習活動 | 教師の支援 | |
導入(5分) | ・江戸時代の税制(年貢)の復習 ・本時の目標を把握する |
・年貢収入の問題点を確認 ・本時の目標1のみ示す |
展開1(25分) | ・地券(表・裏ともに)を読み取り、気づいたことや疑問点をふせんに記入する ・グループで確認後、ホワイトボードにまとめる ・クラス全体で共有する |
・必要に応じて(調べ方を)助言する ・ホワイトボードを撮影し記録 ・疑問点に対して解説する |
展開2(15分) | ・教科書の「地租改正」の掲載ページを読み、地券から読み取った内容が記述されている部分を指摘する ・グループで確認後、ホワイトボードにまとめる |
・必要に応じて助言する ・ホワイトボードを撮影し記録 ・本時の目標2を示す |
まとめ(5分) | ・本時の振り返り ・自己評価 |
・余裕があれば、大学で学ぶ歴史学についてもふれる |
授業展開について補足していきます。導入場面ではまず江戸時代の税制を復習し、地租改正導入の背景を理解させます。「本時の目標」については、ここでは目標1のみ示し、あえて目標2は伝えません。
地券を配付し、展開1「地券の読解」に挑戦させます。このとき、生徒の実態に合わせて、あらかじめ翻刻文を配付してもよいと思います。ただ、筆者がもし授業をする立場であれば、資料の「原文」にたくさん触れてほしいため、ここでは翻刻文を配付しません。その代わり、「わからない地名や語句はスマホやタブレットで調べてみよう」と指示します。個人的な考えですが、高校生が授業等で活用する場合はスマホやタブレットの使用を認めてもよいのではないかと思います。もちろん、使用する場合のルールの徹底や、学校のWi-Fi環境の整備など課題はありますが(21)。
展開1では、「どんなことでもいいから、気付いたことをたくさんふせんに書いてみよう」と働きかけ、生徒から多くの「気づき」を引き出します。ホワイトボードに整理する際は、資料から読み取れた「内容」と「疑問点」に分類します。挙がってくる疑問点としては「なぜ発行元が滋賀県なのか?」「なぜ明治10年に地租が軽減されているのか?」などが予想されますが、できればクラス全体で共有するとよいでしょう。また、場合によっては教師から質問を投げかけることもできます。地券裏面についての読み取りが進んでいなかったときは、「持ち主は山野栄蔵となっているのに、地券が桜井家に伝わっていたのはなぜか?」などと問いかけてみてはいかがでしょうか。裏面に記載されている「土地所有権の移転」に気づくヒントになるかもしれません。
続いて展開2で教科書を開きます。これまで地券から読み取った内容が、教科書のどこに記述されているかを指摘させます。該当箇所はそれほど多くはありませんが、自分たちが資料から読み取った情報と、教科書の記述を照らし合わせることで、「歴史が資料に基づいて叙述されていること」を実感してもらいます。
最後に、本時の目標2を伝え、自己評価をさせて終了です。余裕があれば、ここで大学の「歴史学研究」について触れてもよいと思います。神戸大学大学院人文学研究科長の奥村弘氏は以下のように述べています(22)。
このことはまさに新指導要領の理念に通じるものがあると思います。今回紹介したような、資料にじっくりと向き合う授業は、学習進度との兼ね合いもあり毎回実施できるわけではありませんが、たまに取り入れてみてはいかがでしょうか。その際は、ぜひ地券を、アーカイブズガイドをご利用ください!
「解説」では、資料の取り扱いについて次のように記述されています(23)。
1つの資料から読み取れる情報には限りがあります。しかし、複数の資料を組み合わせることによって、それまで見えてこなかった様々な事実や背景が浮かび上がり、思考をより深めることができます。ここでは、教科書や資料集に掲載されている資料とアーカイブズガイドを組み合わせることで、考察を深めていく授業案を紹介します。
資料C~Fがアーカイブズガイドから作成したものです。資料Cは滝本嘉博家に残されていた戦時中の貯金通帳(26)です。現代と比べるとかなり高い利回りとなっていることがわかります。資料Dは吉川充雄家に残されていた戦時中の国債(27)です。こちらも売出しの金額に対して償還時の金額が非常に高く設定されています。資料Eと資料Fは橋本伝右衛門家に残されていた戦時中の衣料切符(28)と物資購入手帳(29)です。衣料切符には切り取られた跡があり、実際に使用されていたことがうかがえます。これら資料C~Fのように、当時福井で暮らしていた人々の所持品を資料として扱うことで、戦時体制下の生活をよりリアルに感じさせることができます。授業の流れは以下の通りです。
学習活動 | 教師の支援 | |
導入(8分) | ・本時の目標と問いを把握する ・資料を用いずに、問いに答える ・グループ内で資料A~Fの担当を決める |
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展開1(7分) | ・同じ資料を担当する者どうしが集まってA~Fのグループをつくり、それぞれの資料を読み取る | ・必要に応じて助言する |
展開2(20分) | ・最初のグループに戻り、A~Fの資料について読み取った内容を共有する | ・わかりやすく簡潔に説明し、他者の話をよく聴くよう促す |
展開3(10分) | ・A~Fの資料をふまえて、もう一度最初の問いに答える | ・資料をふまえて書けているか確認する |
まとめ(5分) | ・本時の振り返り ・自己評価 |
・資料を組み合わせると理解が深まることに気付かせる |
いわゆる「ジグソー法」を用いた授業展開となっています(30)。導入場面ではまず、教科書や資料集に掲載されている「軍事費の増大と国家予算の膨張」(31)のグラフを見せ、日中戦争が勃発した1937年以降、軍事費が増大していることに気づかせます。ここで、本時の問い「日中戦争勃発後、なぜ政府は巨額な軍事予算を編成できたのだろうか」を提示します。資料A~Fはまだここでは配付せず、生徒に自分の知識だけで考えるように指示し、解答を記述させます。資料配付後、6人組のグループになってもらい、資料A~Fの担当を決めます。
展開1では、同じ資料を担当する者どうしが集まり、A~Fの新たなグループをつくります。それぞれの資料に書かれた内容や意味を話し合い、グループで理解を深めていきます。
展開2では、最初のグループにもどり、資料A~Fについて読み取った内容を報告し合います。自分の担当した資料について他のメンバーは学習していませんので、できるだけわかりやすく説明することが求められます。同様に他のメンバーが担当した資料については、自分はここで初めて知るわけですから、説明をしっかりと聴いて理解することが重要です。
展開3では、6つの資料から読み取った内容を基に、改めて問いに対する答えを作ります。授業冒頭に自分の知識だけで書いた解答と、6つの資料をふまえてつくり上げた解答を比較させ、思考の深まりを実感させます。
今回はジグソー法を用いた案を紹介しましたが、もちろんジグソー法を用いずに1人ですべての資料を読み取らせることも可能です。そちらのほうが読み取りの難易度としては高いでしょう。いずれにしても複数の資料を読み取って、思考を深めることができれば授業のねらいは達成できます。今回示した資料の組み合わせは、あくまで1つの例にすぎません。アーカイブズガイドと既存の資料をどのように組み合わせるか、ぜひ様々なパターンを試していただきたいなと思います。
以上、アーカイブズガイドの活用例を挙げてきましたが、前述のように実際の授業実践ではなく、あくまで「このように活用できないか」という提案にすぎないことをご了承ください。
筆者は文書館職員として、地域の資料を教材として利用したいという先生方を少しでもお手伝いできればと考えています。今後特に力を入れていきたいことは2つあります。
1つ目は、「近世のアーカイブズガイドの件数(現在9件)をさらに増やすこと」です。文書館は、検地帳や寺請証文、一揆関係の文書など近世の資料を多数所蔵しています。これらの中から授業で使える資料をピックアップし、公開につなげていきたいと思います。
2つ目は、「現場の先生方の声をもっと聴くこと」です。アーカイブズガイドの件数がいくら増えても、それが教育現場からの要望に沿う形でなければ意味がありません。そこで、学校の先生方にお願いがあります。アーカイブズガイドを実際に授業で使っていただいた感想や、地域資料に関する要望などをぜひお寄せください。
先日、ある先生から「デジタルアーカイブ福井で公開している給帳(32)を、享保の改革で足高の制を説明する際に活用してみたい」という話をいただきました。文書館の地域資料に注目していただき、大変うれしく感じましたし、資料の教材化を進めていくうえで大変参考になりました。このように、多くの先生方のご意見を反映して、アーカイブズガイドのさらなる充実に努めていきたいと考えています。
最後に、「解説」の「諸資料の活用と関係諸機関との連携」についての記述を引用します(33)。
将来にわたって学び続ける子どもたちの育成のため、福井県文書館は「資料」を通じた教育現場への支援を、今後とも続けていきたいと思います。
田川 雄一 (2020年(令和2)7月24日作成)