以前ある方から、「デジタルアーカイブ福井ではどんな資料が多く閲覧されているのですか?」との質問を受けたのですが、恥ずかしながらそのときは根拠となるデータを基に回答することができませんでした。
本コラムでは、直近1ヶ月間の画像閲覧件数をもとに、デジタルアーカイブ福井でよく閲覧される資料の傾向について探っていきたいと思います。なお、今回扱うデータは主に2021年7月の画像閲覧件数ですが、比較材料として2020年度の画像閲覧件数(年間)と2021年4月~6月までの画像閲覧件数を参照しています。
2021年7月の画像閲覧件数は17,794件でした。今回は、特に閲覧件数の多かった上位5点の画像に絞って、その要因を考えていきます。ではさっそく第5位から順にカウントダウン形式でみていきましょう(それぞれの資料名をクリックするとデジタルアーカイブ福井の詳細ページにリンクします)。
以上、2021年7月の「デジタルアーカイブ福井」画像閲覧件数のトップ5を紹介してきましたが、まとめると下記の表のようになります。
順 位 | 資料群名 | 資料名 | 該当箇所 | 件 数 |
1 | 福井県立図書館貴重資料 | 大日本職業別明細図 第643号 鯖江町及附近町村 | 1コマ目 | 254 |
2 | 松平文庫 | 越前国絵図(慶長期) | 1コマ目 | 116 |
3 | 福井新聞(第2次)(1890年5月31日付) | 3コマ目 | 95 | |
4 | 松平文庫 | 福井分間之図 | 1コマ目 | 82 |
5 | 出淵家 | 新影流秘書 | 1コマ目 | 70 |
これら上位5点の資料(画像)にはどのような特徴があるのか、考察してみます。
最初に2位と4位についてですが、どちらも松平文庫の絵図資料です。実はこの2つの資料は今回(2021年7月)に限らず、常に閲覧件数の上位にランクインしています。
例えば2021年5月の閲覧件数では、「越前国絵図」は164件で1位、「福井分間之図」は120件で2位となっています。そのほか「北之庄城下図」や貞享期に作成された「越前国之図」などの絵図資料も安定して上位にランクインしています。
ちなみにこれら松平文庫の絵図資料は、福井県立図書館ホームページ内の「デジタルライブラリー」にリンクが掲載されており、アクセスしやすくなっています。このことも閲覧件数が安定して多い理由といえるでしょう。
では、松平文庫以外の資料について考察していきます。5位の出淵家「新影流秘書」は2021年6月に閲覧件数が急増し(118件で2位)、7月時点でも上位をキープしています。この時期に閲覧数が急増した要因は、6月25日~8月25日にかけて開催された企画展示「武士と武術」の影響といって間違いないでしょう。
福井県文書館では、新たな展示が開催されると同時にホームページで展示資料の画像とキャプションを公開しています。「デジタルアーカイブ福井」のリンクが掲載されているため、容易にアクセスできるようになっています。
次に3位の福井新聞(第2次)ですが、これ以外の新聞画像はほとんど上位にランクインしていません。なぜ「1890年5月31日3面」の新聞画像に閲覧が集中したのでしょうか。
実は2021年7月、私がある学校で出前授業を実施した際に、この新聞画像を教材として使用したのです。紙面には、福井最初の修学旅行といわれる福井県尋常中学校の修学旅行日記が掲載されています。授業では、約30名の生徒がいっせいに自身のタブレット端末を用いてデジタルアーカイブ福井にアクセスし、新聞記事を読み取りました。
このように、出前授業や講座等で特定の資料を用いると、当然ながらその資料の閲覧件数が増加する傾向があります。なお、この修学旅行記事は福井県文書館ホームページ内の「学校で使える資料>明治の新聞画像」にリンクを掲載しています。
最後に1位の「大日本職業別明細図 第643号 鯖江町及附近町村」についてですが、本資料は常時閲覧件数が多いものではなく、今回(2021年7月)に限って閲覧件数が急増しました。また、同様の資料である「大日本職業別明細図 第623号 福井市・芦原温泉」の閲覧件数も増加し、6位にランクインしています。なお、これら地図資料は松平文庫と同じく、福井県立図書館ホームページ内「デジタルライブラリー」にリンクが掲載されており、アクセスしやすい環境になっています。
ただ、それにしても今回の閲覧件数(254件)は驚異的です。なぜこのような結果となったのでしょうか?考えられることとすれば、鯖江地域の歴史講座等のイベントで閲覧されたか、あるいは「中学生郷土新聞づくり」の資料として学校単位で用いられたのかもしれません。あくまで推測にすぎず、はっきりした要因はわかりませんでしたが、興味深い結果となりました。
ここまで、2021年7月におけるデジタルアーカイブ福井の画像アクセス件数上位5点の資料について考察してきましたが、まとめると以下のようになります。
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今回扱ったデータはわずかなものであり、正確な分析とは言い難いものがあります。
ただ、冒頭で紹介した「デジタルアーカイブ福井ではどんな資料が多く閲覧されているのか?」という質問に対しては、ある程度答えることができたのではないかと思われます。
ところで昨年度(2020年度)に、最も閲覧件数が多かったのは以下の資料です。
「越前国主記」(福井県立図書館(坪川家旧蔵))A0141-00146 |
本資料は越前国の国主(国司・守護・大名・指導者・領主・藩主等)の名前と略歴を列記した写本です。
2020年度(2020年4月~2021年3月)の閲覧件数は1,798件と、他の資料に大差をつけての1位となりました。特に44コマ目の画像に閲覧が集中しています。44コマ目にいったい何が・・・?
それは、「デジタルアーカイブ福井」を使ってご自身の目でお確かめください。
田川 雄一(2021年(令和3)8月29日作成