越前奇談怪談集(6)白鬼女

マット・マイヤー氏のイラストと現代語訳

画像:白鬼女
  白鬼女川(日野川)という大河がある。いつ頃のことか、平泉寺の僧を恋い慕った女が、この川に身を投げて後、鬼女となり、この渡し場に住んでいた。これにより、川の名前になったと言い伝えられている。また、白鬼渡(しらきど)ともいう。昔は橋がかかっていたとか。宗祇著「廻国雑記」(じつは道興の著)に、次のように載っている。
 白鬼渡の橋について、里人に尋ねたが、答えられなかった。
「里の名も いざ白鬼渡の 橋柱 立より問へば 波ぞ答ふる」 (この里の名もいざ知らず、白鬼渡の橋柱が立つところに立ち寄って、名前の由来を問うたが、誰も答える者はなく、川の波だけが答えてくれた)

資料原本と翻刻文

原本画像を見る➤A0143-02736 「帰雁記」(松平文庫、当館保管)39コマ

画像:白鬼女
● 白鬼女川といふ大河あり、いつの頃にや有けん、平泉寺の僧にけさうしける女の、此川に身をなげてのち、鬼女と化して、此渡りに住しより、川の名となりぬといひ伝ふ、また白鬼渡ともいへり、むかしハ橋のかゝりけるにや、宗祇法師が廻国の記に、しらきとの橋、里人にとへ共、答ざれば、
  里の名も いさしらきとの 橋柱
    立よりとへバ 浪そこたふる