今月のアーカイブ Archive of the Month

展示タイトル
『新童子往来万世宝鑑』
『新童子往来万世宝鑑』 1767(明和4)年
吉川充雄家文書(当館蔵) C0037-00366
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本来なら資料価値を下げる落書きも、同時代のものであればそれ自体が日記や私信のように当時の人々や社会をうつし出す資料になります。
また、その中には、明確な意図をもって書かれた「記録」があり、いわゆる落書きとは一線を画しています。
展示では当館の資料を中心とした落書き・落書・落首(*補足)を通して、より人間らしく、より身近な当時の人々の姿を紹介します。

* 補足:落書は落書きの原形で、文章や詩歌の形式をとるもの。詩歌形式のものは落首とも。

会期

平成27年6月26日(金)~8月26日(水) 文書館閲覧室

展示ケース1 落書き -遊び心、イタズラ心-

江戸時代の子どもの落書き

絵本義勇伝
『絵本義勇伝』
1805(文化2)年 吉川充雄家文書(当館蔵) C0037-00655
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大宝小謡諸祝言
『大宝小謡諸祝言』
1812(文化9)年 吉川充雄家文書(当館蔵) C0037-00684
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江戸時代の草双紙(絵本)や童子教(道徳の教科書、トップ画像)に落書きが残されていました。
年代の近いこの2つの落書きはもしかすると同じ人物が書いたものかもしれません。 そうして見ると、絵にも字にもかなりの上達がうかがえます。

戦前の教科書の落書き

尋常小学修身書 巻五 児童用
尋常小学修身書 巻五 児童用
『尋常小学修身書 巻五 児童用』 1930(昭和5)年 文部省発行
福井県立こども歴史文化館蔵
尋常小学校(戦前の初等教育機関、当時の修業年限は6年)に通っていた5年生の男子児童が使っていた教科書です。男の子の教科書らしく、左上には2機の飛行機が描かれています。
下は別のページのもので難しい漢字にフリガナを振り、まじめに勉強しています。と思いきや、よく見ると挿絵に眼鏡の落書きがあります。
いつの時代も子どもの落書きはお茶目ですね…。

さまざまなものに描かれた落書き

数字が刻まれた硯
硯の数字
福井城跡出土 福井県埋蔵文化財調査センター蔵
裏面と側面に数字が刻み込まれています。 何か数えていたのでしょうか。
数字は2から37まであり、奇数と偶数に分けられています。
板に描かれた落書きイメージ
板の墨書
17世紀 初~前 福井城跡出土 福井県埋蔵文化財調査センター蔵
板に墨で絵が描かれています(左から人物、動物、鳥居)。
石に描かれた人物画
石の墨書
人面墨書石 19世紀 中~近代
福井城跡出土  福井県埋蔵文化財調査センター蔵
河原石に墨で顔が描かれています。
目・鼻・マユ、くちヒゲにあごヒゲ、そしてマゲ。やはり侍でしょうか。
土器に人物像
皿の武者像
戦国時代 一乗谷朝倉氏遺跡出土
福井県埋蔵文化財調査センター蔵
土器に人物の立像が彫り込まれています。
破片のため人物でいえば半分、上半身にあたる部分が欠けていますが、袴と臑当から武者像と考えられています。

落書きの謝罪文

落書きの謝罪文
落書きの謝罪文
1863(文久3)年9月 上木禎家文書 C0031-00091
川西廿五日講(講は自主的な信仰上の集まり)が、お寺を信用して講の仏像(絵像)を預けていたところ、お寺の先代住職が仏像の裏に落書きをしたという事件がありました。これはその一件でのお寺の代理人から講への謝罪文です。
「楽書」とありますが、ただのいたずら書きではありません。仏像などの裏には下付を願い出た願主や本山の法主の名前が書かれることが多く、その裏書は、本山と願主の関係や仏像の所有権を示す大切なものでした。
この「楽書」は裏書への加筆のことで、このような情報に変更を加えよう として書かれたものと考えられます。

展示ケース2 落書き -歴史の記録-

瓦に残された記録

小丸城跡出土瓦(複製)
翻刻文
小丸城跡出土瓦(複製)
越前市教育委員会事務局文化課蔵(原物は味真野史跡保存会蔵)
織田信長の配下で府中三人衆の一人佐々成政が築城したとされる小丸城跡から出土した丸瓦で文字が刻み込まれています。
文献では確認できない5月24日の一揆の存在、そしてそこでの前田利家(府中三人衆の一人)と一向衆との戦いの激しさを今に伝える記録です。
この瓦の内容は1.信長方による一揆鎮圧の成功を広めるために記録したもの、2.一向衆方に対する悲惨な仕打ちを後世に語り継ぐものという二つの見方があります。
お城の瓦に刻まれた物語。いったい、誰がこの物語を残そうとしたのでしょうか。

神社のこけら板に残された記録

本荘春日神社本殿こけら板本荘春日神社本殿こけら板
本荘春日神社本殿こけら板
1774(安永3)年 本荘春日神社(あわら市)蔵
本荘春日神社の本殿修復工事で屋根を解体したところ、墨で文字が書かれた複数の板が見つかりました。その中の1枚に書かれていたのが坂井郡安島浦で起きた大疫病・大火の記録です。屋根葺きの棟梁はどのような気持ちでこの板を葺き込んだのでしょうか。
こけら板は屋根葺きに用いられる屋根板の一種です。本荘春日神社本殿ではスギ板が使われていました。代表的なこけら葺きの建築物に金閣(鹿苑寺)があります。

落首 ~落書き文芸~ 京の町人の落首

京の町人の落首
1752(宝暦2)年5月
桜井市兵衛家文書(当館蔵) N0055-00300
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8代小浜藩主酒井忠用の京都所司代就任にあわせて、京都の町人がうたった落首が書きとめられていました。
はじめが肝心とばかりに強気を見せつつ、新所司代への期待も胸に幕府の人事を見守っていたようです。

落首に切り返す蓮如

平泉寺僧徒落首
翻刻文
1748(寛延元)年
桜井市兵衛家文書(当館蔵) N0055-00311
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落首とその返歌をとおして蓮如の偉大さを示した創作逸話です。
蓮如の下向による吉崎の繁栄を見て、平泉寺の僧が称名念仏(南無阿弥陀仏を唱えること)を皮肉った落首を作ったところ、蓮如がその上手を行く返歌を作ったというお話になっています。

落書 ~落書きのはじまり~ 耕地整理反対者の落書

耕地整理反対者による落書
1915(大正4)年
加藤竹雄家文書(当館蔵) A0052-00857
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吉田郡河合村の村長 加藤源太郎宅の玄関先に置き去られた落書です。
「くびをつる」や「うらみ」などただならぬ言葉で反対を訴えています。
実はこの落書があった前日に耕地整理の一時中止が決定していました。少しの差で生じた行き違いだったのです。

パネル展示

パネル展示
本荘春日神社本殿屋根の葺き替え、加古里子『絵かき遊び考』、 俵万智エッセイ「落書き」についてパネルで紹介しています。

タペストリー

タペストリーの展示

ポスター

福井県文書館

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開館時間

開館時間  9:00~17:00
休館日   月曜日(祝日の場合は翌日)
      第4木曜日