今月のアーカイブ Archive of the Month

80年前のふくいのすがた -陸軍大演習の写真と地図から-

県庁南の空き地に集まった小学生・高等女学校生たち
県庁南の空き地に集まった小学生・高等女学校生たち
加藤竹雄家文書 A0052-01408
1933年(昭和8)10月、県下を中心に実施された 陸軍特別大演習は天皇をはじめ皇族や首相・閣僚、外国武官や旧藩主らが多数来県し、福井市内に設けられた指定場所での見物客だけでも15万人(当時の県人口62万人)にのぼる大きな出来事でした。
そのようすはこの年開局したばかりの地元ラジオ局(現在のNHK福井)から全国へ実況中継されました。
当館が新たに受け入れた関連写真を、この際に作成された市街地図や鳥瞰図などとともに紹介します。

会期

平成25年10月25日(金)~12月18日(水) 文書館閲覧室

陸軍特別大演習とは?

昭和8年陸軍特別大演習野外統監部位置要図
『昭和八年陸軍特別大演習並地方行幸福井県記録』
1935年 加藤竹雄家文書 A0052-014
1933年(昭和8)の特別大演習は第九師団(金沢市)と第十一師団(香川県善通寺市)を中心に約2万人の将兵が南北軍に分かれて対抗、戦闘を行う想定で福井県および石川県下で行われました。おりしも第九師団・第十一師団は前年の第一次上海事変に動員された部隊でした。
大演習は農地など私有地上で実施されるため、火災の恐れのある場所での発砲は禁止されていましたが、田畑への損害があれば、市町村長と協議して賠償することが規定されていました。天皇が直接演習を統括する特別大演習は日清戦争後の1900年(明治33)から毎年実施されており、将兵の演習への参加機会を増やし「地方人民をして尚武忠勇の心を喚起」することが意図されていました。
しかし、第一次世界大戦後には戦略的な意義は失われ、後者の目的が大きくなっていったと考えられます。
他方、国道改修等による一時的な雇用拡大や観光収入が大きな経済効果をもたらしました。演習後には天皇は藤島神社・福井精練加工(株)・福井師範学校・福井高等工業学校・気比神宮などに行幸されました。

参考文献:中野良「日本陸軍の典範令に見る秋季演習」『年報・日本現代史』2012年

記録写真

展示ケース内の新出写真
展示ケース内の新出写真
加藤竹雄家文書(当館蔵)A0052-01408
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1 御召列車
2 福井駅を出発する行幸の行列(10月23日)
3 大本営が置かれた県庁に入る行幸の行列(10月23日)
4 観兵式1(足羽川河原の第2観兵式場、10月27日)
5 観兵式2(足羽川河原の第2観兵式場、10月27日)
6 県庁(大本営)正面
7 一般の天機奉伺(県織物同業組合)
8 福井駅前通り
9 だるま屋前に集まった市民
10 県庁南の空き地に集合した旗行列(10月27日)
11 奉迎の提灯行列(だるま屋前、10月28日)
12 県庁から帰還する行幸の行列(10月30日)
13 伊井野外統監部(あわら市)における昭和天皇(10月24日)
14 伊井野外統監部(あわら市)を出発し巡視する昭和天皇(10月24日)
写真の撮影場所 福井県文書館月替展示2013年11・12月
大演習参加将校の記念写真 1933年 福井県文書館月替展示2013年11・12月
大演習参加将校の記念写真
「(陸軍特別大演習集合写真)」野尻喜平治家文書 I0076-01192
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講評場配置要図10月26日、講評の際に会場となった福井高等女学校(現在の県立高志高校)校庭で撮影された集合写真です。
右図のように台形に整列した2000名を超える少尉以上の軍人が写っています。
写真右下の刻印から国土地理院の前身にあたる陸軍参謀本部陸地測量部による撮影と考えられます。
今はすっかり都市化していますが当時は校地のすぐ東隣に田畑が広がっていました。
『昭和八年陸軍特別大演習並地方行幸福井県記録』1935年
加藤竹雄家文書 A0052-01449
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福井新聞 1933年(昭和8)10月27日
福井新聞  1933年(昭和8)10月27日
飯田広助家文書(当館寄託) G0024-00591
10月24日から26日まで3日間にわたる大演習を終え、この日は午前中、福井紡績株式会社(第1会場)と足羽川河原(第2会場)での観兵式、午後には大演習参加将校ほか4000名が招待され、福井高等工業学校(現福井大学)を会場に賜餞(食事会)が開かれました。
陸軍特別大演習記念絵葉書 福井県 1933年
記念絵葉書
勝見宗左衛門家文書(当館蔵) B0037-00723 および 福井県立図書館蔵
デジタルアーカイブ「(陸軍特別大演習記念絵葉書)」はこちら
福井放送局(NHK)開局当初のラジオ放送資料 福井大学附属図書館蔵
福井放送局(NHK)開局当初のラジオ放送資料
1933年(昭和8)7月 福井大学附属図書館蔵
日本でラジオ放送が開始されたのは1925年(大正14)3月。同年7月には名古屋放送局が開局しましたが、名古屋や大阪放送局からの放送は県内では雑音が多く聞きにくい状態でした。
しかし、30年(昭和5)4月の金沢放送局の開局によって、福井市内でも低廉な受信機(真空管二球)で聴こえるようになり、ゆるやかにラジオが普及していきます。
大演習を控えた33年(昭和8)7月には福井放送局(JOFG)が開局し、手作りの鉱石ラジオでも福井平野が聴取範囲となり、アンテナ次第で大野や丹南でもラジオ放送が聞けるようになりました。
大演習時の特別番組では名古屋や金沢の放送局の応援をうけて、 自動車・騎馬・飛行機による移動班が組織され、演習の各局面が全国へ中継されました。
陸軍特別大演習時の騎馬放送班 1933年 福井県立図書館蔵
大演習時の騎馬放送班 「福井放送局所蔵写真集」
福井県立図書館蔵
福井放送局(NHK)のしおり 福井県文書館月替展示2013年11・12月
福井放送局(NHK)のしおり 1936年(昭和11)
加藤竹雄家文書 A0052(整理中)
「ラヂオで学べ ラヂオで笑へ」の広告用のスローガンとともに 1年間使用できるカレンダーがつけられています。
だるま屋少女歌劇 陸軍特別大演習時の特別公演 福井県文書館月替展示2013年11・12月
だるま屋少女歌劇の特別公演「忠臣蔵」
1933年(昭和8)10月27日
高田富文書(当館蔵)A0502-00080、00081、00130、00131

地図(複製展示)

「県庁及松平邸附近平面図」と「福井県地図」
大型複製シート(B0・A1)で展示
複製シートは学校や公民館・福祉施設などに貸出すことができます。
「福井県地図(10万分1)」
1933年(昭和8) 吉川文次文書 A0176-00001
「最新福井県地図」
1933年(昭和8) 吉川充雄家文書 C0037-00113
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「福井市鳥瞰図」
1933年(昭和8) 福井県立図書館蔵
「福井県鳥瞰図」
1933年(昭和8) 福井県立図書館蔵
「最新番地入福井市街地図」
1933年(昭和8) 福井県立図書館蔵

ポスター

福井県文書館

〒918-8113
福井県福井市下馬町51-11
TEL.0776-33-8890
FAX.0776-33-8891
Mail.bunshokan(at)pref.fukui.lg.jp

開館時間

開館時間  9:00~17:00
休館日   月曜日(祝日の場合は翌日)
      第4木曜日