今月のアーカイブ Archive of the Month

はじめの一歩 -手習手本と学び-

『蓬莱百人一首宝文庫』(福井県文書館寄託)
『蓬莱百人一首宝文庫』
坪田仁兵衛家文書(当館寄託) C0005-00735
こどもの読書週間(4月23日~5月12日)にあわせて、江戸時代から明治のはじめの文字学習の資料を紹介します。
さて、村の寺小屋に入ったばかりの「一年生」は どんな教科書で何を学んでいたのでしょうか? 江戸時代に子どもたちが使っていた教科書(手本)は、 師匠が子どもひとりひとりの家業や進路にあわせて1枚ずつ書いてくれたものでした。
この手本を丁寧にみていくと、子どもたちの様ざまな学びのようすが具体的にわかってきます。

会期

平成25年4月20日(土)~5月22日(水) 文書館閲覧室

若狭町食見の手習手本

塩や桐実油づくりとその販売を生業とした桜井市兵衛家(現若狭町)に残された手習手本20冊からは1795年(寛政7)から小学校が開校する1874年(明治7)までの80年間にわたり少なくとも7人の子どもたちが文字を学んでいたことがわかります。
福井県若狭町世久見(食見)の位置
「いろは」(手習手本) 福井県文書館蔵
「いろは」の手本
桜井市兵衛家文書(当館蔵) N0055-00729
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いちばん最初に習ったのは、やっぱり「いろは」。
どの用紙にも折り跡が残っており、当初4行あるいは6行に折ってすぐ横に置いて手本として使い、その後1冊にまとめたと考えられます。
「うれしく 存候 い上」(手習手本) 福井県文書館蔵「市之介 いろはあがり」(手習手本) 福井県文書館蔵
「いろは」あがり! 桜井市兵衛家文書 N0055-00729
「いろは」の次に数字、そしてもっともよく使う単位である「千万億斗升合勺才」を習った後には、「市之介、いろはあかり、うれしく存候、い(以)上」と喜びの言葉も手本になっており、ほほえましい感じがします。
「食見村家名」(手習手本) 福井県文書館蔵
「屋号之事」「邑名手本」(手習手本) 福井県文素館蔵
「いろは」の次に習うのは?
桜井市兵衛家文書(当館蔵) N0055-00723(上) N0055-00722(下左)、N0055-00741(右)
「いろは」の次に取り組んだのは身近な地域の人名や地名でした。
ここでは子どもの住んでいる食見村の百姓名や近隣の村名、小浜城下の商人の名が取りあげられています。
「屋号之事」(下の左)では豪商組屋氏をはじめとして、桑村、窪田、長井など町年寄も務めた主要な商人名や屋号が列挙されていました。
「御手本」(手習) 福井県文書館蔵落書き(子どもの俳句21) 福井県文書館蔵落書き(子どもの俳句1) 福井県文書館蔵翻刻文
ときには落書きも
桜井市兵衛家文書(当館蔵) N0055-00722
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手本の左右の端にはたいてい日付や前回までに習いおわった部分、子どもの名前などが書かれています。これは師匠が次の手本を準備するための覚えであり、 少し文字が書けるようになると、子ども自身が書いておく場合もありました。
ここには、子どもと思われる拙い文字で俳句が記されていました。

手本いろいろ

村尽(手習手本) 福井県文書館蔵
丸岡城下の町名、大野近郊の村名
内田利信家文書(当館蔵) C0127-00002
伊藤三郎左衛門家文書(当館蔵) I0058-00342
右の手本では坂井郡東部約140村の村名ともに丸岡城下の町名が楷書で書きあげられています。
また左のものでは大野城下の近郊の村むらが行書で書かれ、 表紙には手本の筆者と考えられる「中屋可能」の名が記されています。
折手本『商売往来』 福井県文書館蔵
『商売往来』
桜井市兵衛家文書(当館蔵)N0055-01198
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木版刷りに色をつけた美しい紙に書かれた折手本です。
『商売往来』は元禄時代から刊行され、江戸時代にもっとも広く使われた教科書 (往来物)といわれています。
商取引き上の用語や庶民の衣食住にかかわる豊富な商品名、商人の生活上の心得から構成されていました。
福井藩士荒川助尾が書いた手本 福井県文書館寄託
福井藩士荒川助尾の手本
坪田仁兵衛家文書(当館寄託) C0005-00722、00725
学制(1872年)が発布されると坂井郡大牧村(現坂井市)では、福井藩の外塾師を勤めた後に隠居していた荒川助尾(号、もん(さんずいに文)水)を教師として招きました。
荒川は藩主の身近にあって「書物方」「世譜方」を勤めた人物で、 春嶽の漢詩・漢文も添削しました。 風流と酒を愛し、誰でもわけ隔てなく接する人がらから、多くの人々に慕われていたといわれています。

これき特集展示関連 ミニ展示「百人一首とかるたの世界へ」

江戸時代、女子の教養に必要な知識として重視された百人一首は多くの女子用教科書(往来物)や事典(節用集)に収載されました。
『群玉百人一首宝箱 全』 福井県文書館蔵
『群玉百人一首宝箱 全』 1713年(正徳3)
桜井市兵衛家文書(当館蔵) N0055-00922
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『(倭百人一首)』 福井県文書館寄託
『(倭百人一首)』 年未詳
坪田仁兵衛家文書(当館寄託) C0005-01342
『蓬莱百人一首宝文庫』 福井県文書館寄託
『蓬莱百人一首宝文庫』 1895年(明治28)
坪田仁兵衛家文書(当館寄託) C0005-00735
『新撰農村振興いろはかるた』 福井県文書館寄託
『新撰農村振興いろはかるた』 1932年(昭和7)
坪田仁兵衛家文書(当館寄託) C0005-02079

ポスター

福井県文書館

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開館時間

開館時間  9:00~17:00
休館日   月曜日(祝日の場合は翌日)
      第4木曜日