「伝えたい 私たちの記録 -身近な資料の劣化と保存-」
6月9日は国際アーカイブズの日。
現在私たちが作ったり使ったりしている資料の中には、家族の歴史や地域を知る重要な資料として次の世代へ伝えていきたいものがあります。しかし、資料はさまざまな被害を受けて劣化していきます。また、私たちが身近に使っているものが、思いがけなく資料をいためることもあります。
今月は資料の劣化の例と簡単な修復方法、保存のポイントを紹介しています。
会期
平成23年5月27日(金)~6月22日(水) 文書館閲覧室
6月9日の「国際アーカイブズの日」って?
文書や記録を保存し、その利用を図ることの大切さを考える日。1948年(昭和23)6月9日、国際公文書館会議(ICA)の発足にちなんでいます。
劣化する粘着剤
「県政の窓(県政ハイライト)」 1976年(昭和51) 県広報写真81356 整理中
ほとんどの粘着剤は劣化して資料に浸透し、汚していきます。写真にもセロハンテープの劣化が見られます。
さびたホチキスやクリップ
いずれも公文書や古文書から取りはずしたものです。 ホチキスや虫ピン、クリップなど鉄製の金具は、予想以上に早くさびて 資料を痛めてしまいます。
固着して開けなくなった古文書
市橋平吉家文書 G0041
かつて水害に遭った資料です。濡れた紙には、乾燥するにしたがってカビ、ゆがみ、固着などが発生します。さらに腐敗により紙の繊維が破壊されてしまうこともあります。濡れてしまった資料は、出来るだけ早く乾燥させることが大切です。
平成16年7月の福井豪雨で水濡れした資料
『再板 農業全書』 18世紀末(天明期)
坪田仁兵衛家文書(当館寄託) C0005-00404
表紙はすっかりかびていましたが、なかの和紙は思いほかしっかりしていました。
あきらめて捨てないでください。
資料の修復法 -繕い-
比較的小さな傷みを補修する方法です。酸性紙でもろくなった洋紙の縁や綴り穴の補強、折り切れてしまった地図などの資料の補修にも応用できます。
(
2010年6月の月替展示へ)
史実をもとにした時代物の代表的作品です。
中国人の父親と日本人の母親の間に生まれた鄭成功(国姓爺)が滅亡した明朝の復活を目指して戦うという内容で、浄瑠璃だけでなく、歌舞伎の演目にもなり、さらに読本としても出版されました。
ちなみに、表題は架空の話であることを強調するため、あえて「国性爺」と表記されています。
家庭で心がける資料保存のあれこれ
1.温度の変化が小さく、湿気が少ない場所で保存する
カビは温度25~30度、湿度60%以上で育ちます。雨漏りや結露にも気をつけましょう。

2.光による劣化の防止 直射日光が当たらないようにします。
窓にはカーテンやブラインドをつけるとよいでしょう。
3.箱に入れる
資料は箱に収納しましょう。光やホコリ、温湿度の変化などから文書を守り、劣化のスピードを遅らせることができます。
4.防虫剤を入れる
市販の家庭用防虫剤でOKです。ただし、種類の異なる防虫剤を混ぜないようにしましょう。
5.保存箱の置き場所
安定した高い場所に置きましょう。1階よりは2階、棚の下よりは上に保管します。床に置く場合は直接置かず、すのこなどを敷いた上に置きます。

6.虫干し 年に1~2回は虫干しを行いましょう。
梅雨や冬季、降雨の直後などの湿度の高い時期を避け、天気のいい乾燥した日に行います。
直射日光には当てず「陰干し」します。
虫干しの際には資料の状態や保存場所の環境などを点検したり、防虫剤の交換を行ったりしましょう。
ほかに、傷んだ資料への応急処置、文書館での資料保存の取組みのパネルも展示しています。
ポスター