今月のアーカイブ Archive of the Month

「庶民の教養」-読・書・算から広がる世界-

手習いの添削
「手習いの添削」
1745~47年(延享2~4)ころ筆写
江戸時代の庄屋などの文書には、辞書や農書、文例集などにくわえ、川柳や謡曲、読本、滑稽本など、娯楽の要素を含んだ書籍が数多く残されています。
このことは仕事を進めるのに必要な読・書・算や農業の知識だけでなく、 農村においても娯楽をたしなむ下地ができていたことを示しています。
今月は生活に必要な知識を得るための辞書、農書、手習いの反古紙を再利用したものなどを展示するとともに庄屋などに伝わる川柳や浄瑠璃、絵草子などを紹介します。

会期

平成22年9月25日(土)~10月27日(水) 文書館閲覧室

古文書で脳力アップ

展示のようす-手習いの資料
「手習いの添削」 1745~47年(延享2~)ごろ筆写
木村孫右衛門家文書 E0013-00194
ところどころに日付が入り、徐々に上達していることや 今と同様に先生が朱を入れて指導していることがわかります。朱筆には「見事見事」などと随所に褒め言葉が入っているのも面白く感じられます。
なおこの用紙はのちに周囲をカットして、木村家の当主が日本・中国の著名な故事を書き写し「和漢故事文選抜書」 と表題を付けた和綴じ本に仕立てられました。
和綴じ本の奥付は「文政8年2月中旬」(1825年)となっており、実に80年もの時を経て再利用されたことがわかります。
『翰玉古状手習鑑』展示のようす
『翰玉古状手習鑑』 1752年(宝暦2)
木村孫右衛門家文書 E0013-00192
今川了俊・平経盛・源義経など著名人の書簡と伝えられる文章を、手習いの手本として一冊に納めたものです。
本文以外にもさまざまな知識を得る助けとして漢字、礼儀作法、 大名の領地や石高、地名、単語、手紙の書式などが記されています。
『算法大全指南車』
『算法大全指南車』 1716年(享保1)
勝見宗左衛門家文書(当館蔵) B0037-00708
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吉田光由の和算書『塵劫記』の増補版です。
九九、そろばんの使い方から、ネズミ算、金銀貨幣の両替、円や多角形の面積の測り方など、実用に即した計算法が満載されています。
『再板 農業全書』
『再板 農業全書』 18世紀末(天明期)
坪田仁兵衛家文書(当館寄託) C0005-00404
宮崎安貞は安芸国に生まれ、筑前国福岡藩に仕えたのち帰農し、農業技術の改良、農民の指導にあたりました。
1697年(元禄10)に長年の農村生活をもとに、作物の農法を記した全11巻からなる『農業全書』を刊行しました。
本書は天明期(18世紀末)に再版されたものですが、明治期まで何度も増刷され、日本の農業に大きな影響を与えました。

さまざまな蔵書

『国性爺(こくせんや)合戦』
『国性爺合戦』 近松門左衛門作
桜井市兵衛家文書(当館蔵) N0055-00951
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史実をもとにした時代物の代表的作品です。
中国人の父親と日本人の母親の間に生まれた鄭成功(国姓爺)が滅亡した明朝の復活を目指して戦うという内容で、浄瑠璃だけでなく、歌舞伎の演目にもなり、さらに読本としても出版されました。
ちなみに、表題は架空の話であることを強調するため、あえて「国性爺」と表記されています。
『柳多留』
「柳多留」 1835年(天保6)筆写
飯田広助家文書(当館蔵) G0024-01175
1,500句以上が手書きで記された川柳の句集です。川柳は俳句と同様に5・7・5の17音を基本としていますが、口語体で季語も不要です。
生活を鋭く風刺した句や歴史的な教養を背景とする句、 ユーモアにあふれた句などが並んでおり、なかには『誹風柳多留』に採録されている句もあります。
『絵本一粒万倍』表紙『絵本一粒万倍』本文
『絵本一粒万倍』(全三巻)1752年(宝暦2)
桜井市兵衛家文書(当館蔵) N0055-00871~00873
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デジタルアーカイブ N0055-00872 の画像はこちら
デジタルアーカイブ N0055-00873 の画像はこちら  
『北越雪譜』表紙
『北越雪譜』 鈴木牧之著(山東京山増修)
1836年~41年(天保7~11)
坪田仁兵衛家文書(当館寄託) C0005-00420~00426
越後国塩沢(現在の新潟県南魚沼市)で小千谷縮の仲買や質屋を営む豪商の家に生まれた鈴木牧之は 幼少のころから父の影響を受け、書画や俳諧をたしなみました。
商用で江戸に出た牧之は、江戸の人々が雪国のことを知らないのに驚き、この随筆を著しました。執筆後出版にこぎつけるのに苦労しましたが、山東京山(戯作者山東京伝の弟)の助けを得て天保年間に初編3巻と第二編4巻の計7巻が発行されました。
越後の民俗・伝承・産業などを知る貴重な資料です。

ポスター

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開館時間

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