今月のアーカイブ Archive of the Month

「献上うに・かに」

越前雲丹のラベルと松平春嶽書簡の控え
越前雲丹のラベルと松平春嶽書簡の控え(部分)
『越山若水』とよばれる福井県では、海の幸・山の幸に恵まれた食文化が育まれています。
今月は献上品としても知られる「うに」と「かに」に関する資料を通して、ふくいの豊かな食文化の歴史をふりかえります。

会期

平成22年8月27日(金)~9月23日(木) 文書館閲覧室

うに

越前のうには江戸時代、「天下の三珍味」の一つとして全国に知られていました。
越前海岸の浦々からは「雲丹御用」として藩に納められ、将軍家や諸大名に献上されていました。
長橋浦・両菅生浦雲丹御用ニ付願書(部分)願書包紙
長橋浦・両菅生浦雲丹御用ニ付願書(部分) 1828年(文政11)
松田三左衛門家文書(当館蔵) A0169-00227
デジタルアーカイブはこちら
この資料は、南菅生・北菅生・長橋の3か浦から出された願書です。 この3か浦では、毎年藩へうにを納めることが課せられ、 土用に入ると藩役人が出張してきて確認し、吟味して上納していました。 願書では「他の浦は1年おきでしか納めていないが、 当3か浦は大切な御膳に上がるうにをとる場所ということで、 1年も免除されたことがない。 負担が大きいので、増人足をしてもらえないか」と願い出ています。
『日本山海名産図会』 越前うに
『日本山海名産図会』 蔀関月画 1799年(寛政11)
福井県立歴史博物館蔵
5巻5冊からなり、著者は木村孔恭と推定されています。日本各地の産物の採取・生産のようすを描いた図に解説文を付したものです。
うにについては「これ塩辛中の第一とす。諸島にあれども越前薩摩の物名品とす。」 「海人塩に和して酒殽の上品とす。」「越前の物は黏粘ありて光艶も他に超たり。また、物に調味して味噌にかえて一格の雅味あり」と紹介しています。
ここでは、人々が浜辺でうにを拾っているように描くかれていますが、実際には浅い海底に生息しているうにを拾ったり、潜って捕ったりしたと考えられます。
うに漁のようす(坂井市三国町雄島) 福井県水産試験場提供
うに漁のようす(坂井市三国町雄島)
福井県水産試験場提供
越前雲丹(うに)のラベル
越前雲丹のラベル
年代は未詳ですが、1964年(昭和39)に越廼漁業協同組合と合併した居倉漁業協同組合の印影から、約50年以上前のものであることがわかります。
海中のうにうに加工のようす加工されるうにうに加工のようすバフンウニの卵巣バフンウニの殻
うに加工のようす 福井県水産試験場提供

かに

福井を代表する味覚・越前がに。
江戸時代の小浜のようすを伝える『稚狭考』や『日本山海名産図会』の若狭鰈の項には鰈の際、一緒にかにが採れたという記述があります。
しかし、越前がにが皇室への献上品となったのは明治時代。今から百年前の9月のあるイベントがきっかけでした。
御書翰御来翰
「御書翰」「御来翰」(部分) 1864年(元治元)
松平文庫 福井県立図書館保管
「御書翰」は1863年(文久3)10月から67年(慶応3)8月までの松平慶永(春嶽)の書翰の控え、「御来翰」は同時期の春嶽宛の書翰の写しです。
展示では1864年(元治元)正月に参預会議のために京都に滞在していた春嶽と、同じく参預として京都にいた土佐前藩主山内豊信(容堂)との間で交わされた書翰を紹介しています。
容堂から鶴の肉を贈られた春嶽がお礼に越前産のかにの足を贈りました。ところが容堂は「気味悪く大閉口」「賞味はできがたい」と返信し、お返しに鯨肉を贈ってきました。すると春嶽は「鯨肉は臭くていやだから他の人にあげた」と返事しています。
友人同士のざっくばらんなやりとりがうかがわれます。
松平春嶽書簡 鶴のお礼に蟹春嶽書簡1(現代語訳)翻刻文
山内容堂書簡 蟹のお礼に鯨、ところで長州暴発は言語同断容堂書簡(現代語訳)翻刻文
松平春嶽書簡 長州暴発について、さて鯨は苦手だよ 春嶽書簡2(現代語訳)翻刻文
皇太子北陸行啓を報じる福井新聞の記事
皇太子北陸行啓を報じる福井新聞の記事 1910年(明治43)
1910年1月1日の記事で「昨秋の東宮殿下の行啓の際、中村知事が本県の水産物に関して 蟹が美味であることを申し上げ、かつ、漁期になったら献上したいという旨を侍従へ申し出た。知事は年末に上京した際、わざわざ丹生郡四ケ浦から新鮮な蟹を取り寄せ、東宮御所に献上したところ、殿下には深くご満足され、その日の晩餐の御膳で 召し上がられたということである」とあります。
福井県からかにが皇室に献上された最初とされます。
皇太子殿下北陸行啓記念絵葉書 緑門
皇太子殿下北陸行啓記念絵葉書 緑門
1909年(明治42)
勝見宗左衛門家文書(当館蔵) B0037-00722
デジタルアーカイブはこちら
皇太子殿下北陸行啓記念絵葉書 人文字
皇太子殿下北陸行啓記念絵葉書 人文字「ほうげい」
1909年(明治42)
勝見宗左衛門家文書(当館蔵) B0037-00722
デジタルアーカイブはこちら

ポスター

福井県文書館

〒918-8113
福井県福井市下馬町51-11
TEL.0776-33-8890
FAX.0776-33-8891
Mail.bunshokan(at)pref.fukui.lg.jp

開館時間

開館時間  9:00~17:00
休館日   月曜日(祝日の場合は翌日)
      第4木曜日