「むしばまれる文書」
虫食い、水害、さび…。
長く伝えられてきた文書は、いろいろな形で被害を受けています。文書館の収蔵資料に残る様々な文書の傷みと、その修復の一部をご紹介しました。
加藤竹雄家文書(当館蔵)A0052-00008
虫による被害
安永6年(1777)4月「乍恐奉願上候口上之覚(宮山之木伐採ニ付)」
岩崎左近家文書(当館蔵)Q0064-50003(003)
書籍、古文書を食べる昆虫としては、シミ(漢字では「紙魚」とも書きます)がよく知られています。シミは糊づけした紙を好み、表面をなめるように浅く食べていきます。
しかし、その被害がもっとも激甚なのは、トンネル状に資料に孔をあけてしまうシバンムシによるものです。幼虫は1mmほどの丸い孔を掘り、トンネルは長いもので10~15cmに達するといいます。
また身近な昆虫では、ゴキブリによる被害も少なくありません。糊づけした表紙などを食べ、糞によって資料を汚染します。
資料は、こうした虫損によってレース状になった資料をリーフキャスティングマシン(すきばめ漉嵌機)で補修したものです。
酸性紙
「農業共済組合設立認可(福井・敦賀・南条)」
1948年(昭和23)農林部農務課 153
インクのにじみ止め(サイズ剤)を定着させるため、硫酸アルミニウムを添加した紙を酸性紙といいます。硫酸アルミニウムは紙や大気中の水分と反応し、紙を構成する繊維(セルロース)を徐々に分解する作用を持っています。そのため、紙によっては100年もたたないうちにボロボロに劣化してしまうものもあります。
酸性紙は戦前・戦後の昭和15~25年頃に多く用いられており、この時期に作成された公文書には、すでに劣化した酸性紙が多く見られます。
資料はとくに劣化が著しいものです。
ページの周辺がこげ茶色に著しく変色し剥離しているため、脱酸処理を行って劣化の進行を止め、周辺部を和紙で補強しています。
鉄製金具のさび
藤野厳九郎家文書(当館寄託)C0125-00214(整理中)
ホチキスや虫ピン、クリップなど鉄製の金具は長期間資料に付けたままにすると、さびで資料そのものを傷めてしまいます。
その他
湿気や水による被害、セロファンテープなどの劣化した粘着剤による被害を取り上げました。