今月のアーカイブ Archive of the Month

記憶を記録に 旧福井藩士寺島知義

旧福井藩士寺島知義が編さんした「温古集」(文書館保管松平文庫)を読み解く「くずし字初級講座」の開催にあわせて、「温古集」の原本と寺島知義に関連する資料を展示します。
寺島知義は、旧藩・旧県で作成された記録が処分されようとした時、これを保存すべきと考え、願い出でて貰い受け、分類・整理して旧主松平家に寄贈しました。
この寄贈した記録が、現在の松平文庫の一部です。

会期

令和2年10月10日(土)~12月23日(水) 文書館閲覧室 ※終了しました

寺島 仙右衛門 仙衛 知義

(文化12年(1815))~明治21年(1888)11月9日

寺島は新番格以下(士・卒のうち卒)で8石2人扶持の切米取(藩の米蔵から切米を支給)、いわゆる下級藩士でした。

天保6年(1835/21歳) 家督相続・御目付組
同14年(1843/29歳) 物書役
安政6年(1859/45歳) 諸下代(仮預り浮下代)
同 年 御目付御記録書継方御下代
文久2年(1862/48歳) 役席小寄合格
元治2年(1865/51歳) 小寄合格
慶応2年(1866/52歳) 御小人目付
同4年(1868/54歳) 小算格
明治2年(1869/55歳) 評定局御記録方下代兼
同 年 掌政局筆者
同 年 名替(仙右衛門→仙衛)
同3年(1870/56歳) 記録方兼筆者
同 年 史生
同 年 史生兼庁掌
同4年(1871/57歳) 廃藩で免職

この後、寺島は福井県・足羽県に同様の勤め向きで出仕します。
そして明治5年(1872/58歳)に再度名替(仙衛→知義)、翌6年に廃県で免職、翌々7年に第11大区21小区3組副戸長を務めています。
※年齢は「温古集」の「明治十七年十二月/七十翁 寺島知義」という記述にもとづいています。

1 奇特な寺島

「温古集 二巻」

年月日未詳「温古集 二巻」
A0143-01041 松平文庫(当館保管)

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寺島が明治10年代の半ばから編さんしはじめた雑記です。寺島は毎日毎日、風呂敷包みを提げて古老を訪ね歩いたといいます。その風呂敷包みには寺島が「温故集」と名づけた冊子がおさめられていたそうです(『越前人物志』)。
老齢に入った寺島が足を使って書き留めた旧藩時代の記憶、それがこの「温古集」(全5巻)です。

2 寺島がいなければ松平文庫は……

「(小石川新邸修理、福井邸内出火岩佐侍医宅焼失、鉄道禄券一条、寺島知義足羽県廃棄文書保存への謝礼、世譜請書・書賃等ニ付書簡)」
「(小石川新邸修理、福井邸内出火岩佐侍医宅焼失、鉄道禄券一条、寺島知義足羽県廃棄文書保存への謝礼、世譜請書・書賃等ニ付書簡)」
「(小石川新邸修理、福井邸内出火岩佐侍医宅焼失、鉄道禄券一条、寺島知義足羽県廃棄文書保存への謝礼、世譜請書・書賃等ニ付書簡)」
「(小石川新邸修理、福井邸内出火岩佐侍医宅焼失、鉄道禄券一条、寺島知義足羽県廃棄文書保存への謝礼、世譜請書・書賃等ニ付書簡)」
「(小石川新邸修理、福井邸内出火岩佐侍医宅焼失、鉄道禄券一条、寺島知義足羽県廃棄文書保存への謝礼、世譜請書・書賃等ニ付書簡)」

1876年(明治9)12月25日
「(小石川新邸修理、福井邸内出火岩佐侍医宅焼失、鉄道禄券一条、寺島知義足羽県廃棄文書保存への謝礼、世譜請書・書賃等ニ付書簡)」
A0143-00852 松平文庫(当館保管)

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福井の大井弥十郎・毛受洪・千本久信(旧福井藩士)から東京の武田正規(松平家の家令)・岩屋政(同家従)に宛てた書簡です。そこで寺島が話題にのぼっています。
去る18日に「泉御邸」(養浩館)で「老公」、すなわち松平春嶽が寺島に「御書」(直書)と「御羽織」を贈ったとあります。
また、同じ頃に「正四位様」、松平茂昭も寺島に「御書」を贈ったとのことで、寺島は「深く難有狩((ありがたがり))」、「感涙数行」、そして「私共迄厚御礼之儀も申出」たといいます。
書中にその理由は書かれていませんが、寺島は明治6年(1873)1月の足羽県廃県に際して、売り払われようとしていた廃棄文書を貰い受け(寺島は購入のつもりで申出)、分類して旧主に寄贈していました。この「御書」と「御羽織」は、その感謝の印だったのです。
ちなみに寺島が分類・寄贈した廃棄文書は、現在の松平文庫へと連なります。

3 寺島老人の願い

「福井新聞 第54号」

1882年(明治15)01月12日
「福井新聞 第54号」
A0178-00001-007 福井新聞社文書(当館蔵)

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「福井新聞」(第一次)に福井新聞社(現在の福井新聞社とは別の系統)の編集局を訪れた寺島を題材にした記事が掲載されています (14日に続き記事あり)。
「当地の士族」で「寺島知義となん呼べる老人」は、旧藩時代の記憶が忘れ去られようとしている現状を憂慮していました。
そこで、「昔のさまをそのまゝにものしこれに図を加へし一書」を携えて編集局を訪れ、記者に志を受け継ぐ人材の募集を相談したのです。
記者は寺島の「懇請」に応えました。それがこの記事です。記者は記事に「一書」の抜粋も掲載して読者に呼びかけています。

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