松平文庫テーマ展

越前と明智光秀 -"伝承"をたどる-

令和2年の大河ドラマ「麒麟がくる」の放映にあわせ、主人公明智光秀と越前とのつながりがクローズアップされています。
越前には浪人時代の光秀が住んでいたとされる寺院門前や、その後に住んだとされる館跡の伝承があります。また、福井藩士のなかには光秀勢に属して本能寺の変に加わったとする由緒を持つ家もありました。
本展示では松平文庫の中から光秀にまつわる越前の伝承を載せた資料を紹介します。

会期

2020年1月24日(金)~3月25日(水) ※終了しました

(0)謎多き越前時代の光秀

「恕軒覚書抜書」
「恕軒覚書抜書」年代不明
松平文庫(当館保管)
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『明智軍記』またはその周辺からの抜粋。
弘治2年(1556)に美濃から越前に来たこと、縁のあった称念寺(坂井市)の領内に妻子を預けて武者修行の旅に出かけたこと、6年後に越前に戻って朝倉義景に仕えたことなどが記されています。
「明智軍記」には、史実と異なる記述が多くみられます。そのため史料的価値は低いとされますが、近年の研究により、称念寺や朝倉家との関わりなど越前時代の光秀像が少しずつ解明されています。

(1)-1 光秀 坂井郡長崎に落魄す

「古今類聚越前国誌」
「古今類聚越前国誌」文化元年(1804)
松平文庫(当館保管)
世に出る前の光秀が坂井郡長崎の称念寺門前で不遇をかこっていたこと、妻が節操を守りながら「貧窶(非常に貧しい)」の状態にあったことが、「稗史」すなわち伝承等を集めた小説風の歴史書(『絵本太閤記』等)に載っている、とあります。

(1)-2 光秀 一揆勢の“殺気”を視る

「絵本太閤記」
「絵本太閤記」初篇巻之九 寛政9年(1797)
松平文庫(当館保管)
読本(小説)。加賀一向一揆の越前侵攻に際し、長崎にいた光秀は戦いを見るため御幸塚(小松市)に出向きました。一揆勢の夜討ちの「気」を感じた光秀は、それを朝倉方に告げます。これを機に光秀は朝倉家に仕えるようになったといいます。

(1)-3 光秀の妻 饗応のため髪を売る

「絵本太閤記」
「絵本太閤記」 三篇巻之八 寛政10年(1798)刊ヵ
松平文庫(当館保管)
読本((小説)。越前の長崎にいた光秀は来客をもてなそうにも金がなく、妻が自分の黒髪を売って酒肴を用意したという逸話を載せています。
芭蕉の句「月さびよ明智が妻のはなしせむ」はこの逸話に取材したものとする説があります。

(2)光秀“汐越の松”を詠む

「越藩拾遺録」
「越藩拾遺録」 天明2年(1782)
松平文庫(当館保管)
坂井郡浜坂浦(あわら市)にある歌枕の名所「汐越の松」。後に「奥の細道」で芭蕉も訪れたこの松を、光秀が詠んだ歌が伝わっています。
典拠となったのは『明智軍記』と考えられますが、実際に越前時代の光秀が訪れて詠んだのでしょうか。

(3) 東大味村に“明智様”の屋敷跡

「城跡考」
「城跡考」 享保5年(1720)
松平文庫(当館保管)
享保5年(1720)福井藩主松平吉邦の命を受け、越前国内の城跡・館跡・屋敷跡などが詳細に調査されました。
その結果をまとめた本資料には、足羽郡東大味村(福井市)の箇所に「屋敷跡」「明智日向守(光秀)」と載っています。

(4)-1 先祖は本能寺で森蘭丸を討ちました

「諸士先祖由之記」
「諸士先祖由之記」 享保6年(1721)
松平文庫(当館保管)
享保6年(1721)、福井藩主・松平吉邦の命を受け、中級以上の藩士が提出した先祖由緒書を集成したものです。
四王天家の元祖・又兵衛政実は明智軍に属し、本能寺の変で信長の小姓・森蘭丸を討ち取ったとしています。

(4)-2 武勇絶倫!人気浮世絵シリーズにも

「太平記英雄伝」
「太平記英雄伝」 慶応3年(1867)刊
個人蔵
幕末の浮世絵師・落合芳幾が四王天を描いたもので、名前が「政実」ではなく「政明」となっています。
明智軍が本能寺を取り囲んだ際、四王天が1丈(約3m)もの大石を打ち付けて寺の門扉を壊す場面は『絵本太閤記』に取材したものです。

(4)-3 大ベストセラー小説にも登場!

「絵本太閤記」
「絵本太閤記」 三篇巻之九 寛政10年(1798)刊ヵ
松平文庫(当館保管)
江戸時代後期に大流行した読本(小説)『絵本太閤記』にも四王天の活躍は描かれています。
展示箇所は、光秀方の安田作兵衛と信長方の森蘭丸との戦闘場面で、この後左手から登場した四王天又兵衛が蘭丸の首を取りました。

展示パネル

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開館時間

開館時間  9:00~17:00
休館日   月曜日(祝日の場合は翌日)
      第4木曜日