『尋常小学読本』巻之2「猿とかにとの話」
山内秋郎家文書(当館蔵) X0142-00940
江戸時代、子どもに文字を学ばせるための手習のお手本集の中に『さるかに合戦』を福井版にアレンジした興味深い作品が残されていました。
カニの出身地は福井、サルの本拠地は茨城という設定で、総勢5千匹が東海道をとおってサルの隠れ家に攻め込むという、日本海側から太平洋側までを股にかけた壮大な物語が繰り広げられます。
今回はたくましい想像力と豊かな遊び心に驚かされる作品を紹介します。
会期
平成28年6月4日(土)~7月13日(水) 福井県文書館閲覧室
『さるかに合戦』で文字の練習
年未詳(江戸時代~明治時代初期)
加藤竹雄家文書(当館蔵) A0052-01740
デジタルアーカイブは
こちら
文字や言葉を学ぶための手習いのお手本です。
全23丁(全42頁)で、1冊が丸ごとひとつの物語になっています。
文字はもちろんのこと、物語も手習いの先生の手によるもので、昔話の『さるかに合戦』を土台にしつつ、所どころに創作や変更が加えられています。
福井の「安居」や茨城の「猿ヶ嶋」(猿島)といった実在する地名に、親ガニの敵討ちを使命に生きる子ガニ、「剃刀屋小刀兵衛」や 「釘屋錐介」といった名前からして頼もしそうな仲間など、物語には当時の福井、時代の空気もいっしょに閉じこめられているようです。
同資料は平成28年度の古文書入門講座でもテキストとして利用する予定です。
他に若狭の手習いのお手本集も紹介しています。
『さるかに合戦』で国語の授業
『尋常小学読本』巻之2「猿とかにとの話」
山内秋郎家文書(当館蔵) X0142-00940
戦前の尋常小学校の国語用の教科書です。
漢字や教訓を学ぶための教材として、昔話の『さるかに合戦』が使われています。
物語は3章にわけられていて、『さるかに合戦』だけで3課分にあてあられています。
サルと喧嘩したカニは怪我をするだけで、そのカニ自身が仲間と一緒にサルをこらしめにいくという物語になっています。そのため、子ガニは出てこず、一部の登場人物も一般的な『さるかに合戦』とは異なり、「卵」(栗のかわり)や「こんぶ」(牛の糞のかわり)になっています。
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