ほっておくと、こうなります。転ばぬ先の資料保存
(↑ビネガーシンドロームを発症したマイクロフィルム)
人間が記録に用いてきた媒体は紙、木、ガラスなどのアナログなものからCD、DVD、HDなどのデジタルなものまで非常に多岐に及びます。
永久不変の記録媒体はありえませんが、保存・管理の違いにより資料の劣化のスピードも変化します。
今回の展示では6月9日の国際アーカイブズの日にちなみ、 資料に被害を加える身のまわりのものや大切な資料を未来に遺すための工夫について過去の展示も活かしながら紹介します。
会期
平成27年5月29日(金)~6月24日(水) 文書館閲覧室
公開補修 平成27年6月6日(土) 11:00~16:00
展示ケース1 日常にひそむ さまざまな危険
資料に害を与える原因はさまざまです。
虫に喰いあらされたり、ネズミの常に何かをかじるという習性の犠牲になったり、資料そのものや資料を管理、保存するためのもの(テープ、金具など)が資料に思わぬ
ダメージを与えることあります。
また、災害によって被害を受けるケースも珍しくありません。それぞれのケースの原因を理解し、予防策を講じることが何より大切です。
虫に喰いあらされた様子
「特別地価修正一筆限表 坂井郡鷹巣村南菅生部」 1890年(明治23)
松田
三左衛門家文書(当館蔵) A0169-02558
デジタルアーカイブは
こちら
ネズミにかじられた資料
「(少女肖像写真、振袖、「松丸 伊藤」、撮影:大野町 多田浩写真館)」
年未詳 伊藤三郎左衛門家文書(当館蔵) I0058-00412
デジタルアーカイブは
こちら
紙が酸性化しぼろぼろに
「(水稲栽培試験成績、雑草防除、水稲新品種育成)」 1958年(昭和33)
40006328 当館蔵
テープの糊
高田富文書(当館蔵) A0502-00162
鉄製金具のサビ
「高等小学日本歴史 巻一」1910(明治43)
坪田仁兵衛家文書(当館寄託) C0005-01192
水損により開かない資料
市橋平吉家文書(当館蔵) G0041(整理中)
展示ケース2 資料の修復 代替化
資料の修復 ~リーフキャスティング~
「学問のすすめ 全(石川新聞附録、教科書)」 年不詳
橋本伝右衛門家文書(当館蔵) A0163 -00123
デジタルアーカイブは
こちら
リーフキャスティングにより修復を受けた資料です。デジタルアーカイブの画像と見比べてもらうと、孔が見事にふさがれていることがわかります。
資料の代替化
年不詳 義江市郎右衛門家文書(当館蔵) A0181‐00083
ガラス乾板という写真です。感光材料の一種で写真乳剤を無色透明 のガラス板に塗布したものです。日本では昭和前期まで使用されていました。
衝撃や光に弱いという性質から使われなくなりましたが、現在デジタル化を通して資料の代替化が進められています。
その他の再利用された資料として、明治時代の高札を展示しています。
展示パネル マイクロフィルムについて
ビネガーシンドローム
ベース(フィルム)の湾曲
結晶化(中央に白くみえるもの)
可塑剤の溶出
画面の崩壊
ビネガーシンドロームとは…
マイクロフィルムが温度と湿度の影響を受け、加水分解により酢酸ガスを発生させ、 さまざまな劣化が生じることです。
日本においては1950~90年にかけて多く使用されたTACフィルムでよくみられる劣化です。 一度酢酸ガスが発生するとその進行を止めるのは難しく、その個体のみならず
周囲のフィルムにも悪影響を及ぼします。
マイクロフィルムの適切な取扱いについてはパネルで紹介しています。
参考資料「図書館・博物館・文書館のためのマイクロフィルム保存ガイド」(東京大学経済学部資料室発行)
この他、リーフキャスティングの様子、ご家庭で行う資料保存の豆知識や電子記録媒体の保存についてもパネルで紹介しています。
ご家庭に古い資料をお持ちの方で、保存管理に困っておられる方は、文書館にご相談ください。
ポスター