9 変わる農業(1)
 高度経済成長のもとで日本の農業・農村は劇的に変動しますが、県内の農業・農村も、地域的な個性をもちながらも大きく変化してきました

 福井県の総農戸家数は1950年(昭和25)の7万2000戸をピークに減少し始め、なかでも専業農家は、90年(平成2)にはわずか2337戸に激減してしまいました。一方で、60年代後半から増加していた農業以外を主収入とする第2種兼業農家も85年から大きく減少に転じています。

 福井県では、すでに戦前から機業などとの兼業が顕著で、1938年の調査では農家戸数の73%が兼業化しており、全国第1位の割合を示していました。この兼業化の動きは、戦後、高度経済成長の過程でいっそう拡大し、深化してきました。

 60年代に実施された農業構造改善事業では、土地基盤の整備として、用排水を分離し、大型の農業機械を導入できる農道と大区画の圃場整備が進みました。舗装された農道と整然と並ぶ長方形の圃場、高くそびえるカントリーエレベーターと、平野部を中心に農村の景観は、一変してしまいました。
 
  専業・兼業別農家戸数
   ▲専業・兼業別農家戸数   『農業センサス』による。

    早生品種の収穫(春江町)
    ▲早生品種の収穫(春江町)
    県下のカントリーエレベーターの施設能力・普及率はともに
    全国的に最上位にある。また、従来から早場米の産地であっ
    た福井県では、1991年(平成3)に育成された早生品種「ハナ
    エチゼン」の作付面積が95年で35%にのぼっている。

←前テーマ→次ページ目次