16 在郷町(1)
 在郷町は在町・郷町などともよばれ、越前・若狭では、ほとんどが街道に面した交通の要衝に立地し、平野部や山間部・沿岸部など異なる地域の物資の集散地でした。なかには中世あるいは近世初期の城下町から変貌した町もありました。

 最も典型的な在郷町は今立郡粟田部です。今立郡の村むらの物資の集散地であり、美濃との物資輸送ルートの拠点でもありました。同国に運ばれた物資には、塩・塩干魚・海産物・日用雑貨などがあり、美濃からは炭・繭・生糸などがもたらされました。

 宿場町の性格が強かった在郷町には、越前では坂井郡金津・足羽郡東郷・南条郡今庄があります。金津は南・北金津町と金津新町の3か町からなる北陸道の宿駅であり、1773年(安永2)には、旅篭屋・揚屋・鍛冶屋・大工・油屋・室屋・桶屋・木挽・紺屋・豆腐屋・毛抜屋などがありました。東郷は、朝倉街道と美濃街道の交わる地点にあり、産業・交通の一中心でした。その町並みは東側の安原村・小路村、西側の福田村まで続いていました。今庄は、中世から北陸道の重要な宿場町であり、周辺地域の物資集散の中心地でもありました。

 
粟田部町絵図
▲粟田部町絵図
今立郡の五箇(定友・新在家・岩本・大滝・不老)と粟田部を描いた184
5年(弘化2)のものと思われる絵図の粟田部町の部分である。おそらく
家数は500軒に近かったであろう。やや大きな家が並んでいる東西方
向の通りが町の中心で、左端が札の辻であり高札場がみえる。北の
社が総社白山大権現(現岡太神社)で、背後の山には満開の薄墨桜
が描かれている。
             松平文庫 松平宗紀氏蔵 福井県立図書館保管

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