11 絵図の語る荘園(1)
              坂井郡高串村東大寺大修多良羅供分田地図
              ▲(4)坂井郡高串村東大寺大修多羅供分田地図(天平神護2年10月21日)
              高串荘は東大寺の学問僧の大修多羅衆の費用をまかなうためにあてられた。大和絵風の景観の描き
              方は、(2)(3)とともに奈良時代の絵画資料としても貴重。右上に「未開(未開墾地)肆(4)町」「見開田
              (開墾地)陸(6)町」などの記述がある。56×114cm                   奈良国立博物館蔵

 今日、「東大寺開田地図」と総称される8世紀の古代荘園図は20数面現存しており、そのうちつぎに掲げる759年(天平宝字3)の1面と766年(天平神護2)の3面の計4面が福井県関係のものです。

(1)足羽郡糞置村開田地図  天平宝字3年12月3日
(2)足羽郡糞置村開田地図  天平神護2年10月21日
(3)足羽郡道守村開田地図  天平神護2年10月21日
(4)坂井郡高串村東大寺大修多羅供分田地図  天平神護2年10月21日
(1)(2)(3)は麻布に描かれた布図であるのに対して、(4)は同一規格の楮紙4枚を縦2枚・横2枚に貼り継いで描かれた紙図です。

 これら4面の荘園図は、いずれも北を上にして、郡単位の統一的な条里プランにもとづいて作製されています。たとえば、条・里・坪(坊)の方格線を同一直線で画一的に描き、6町4方の里の区画が何条何里の何という名称であるかを記載し、さらに1町の方格線内には、坪の番付表示(1〜36)と田・畠・野・薮・宅地などの土地利用や面積などが文字情報として詳細に記入されています。一方、方格線の枠を越えて、現地の自然景観で特徴的な山・丘・川・沼の形状とその名称や、道・溝・建物および荘園の境界線などがリアルに描かれています。とくに、色彩豊かに描写されている絵画的な自然景観は、荘園の所在地や景観を知るうえで重要な要素をなすものです。 

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