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 第五章 大正期の産業・経済
   第一節 農業・水産業の展開
    三 水産業の隆盛
      福井県水産会
 県下各漁業組合を統合する組織として、明治三十八年(一九〇五)に「福井県漁業協会」(会長大谷政治郎)が組織され、これが母体となって四十一年末に「福井県水産組合」(組合長小堀善七)が設置された(千田九郎助家文書、『福井新聞』明42・1・30)。さらに、大正十年六月の水産会法の施行にもとづいて、同年末には郡市水産会とその上部団体である「福井県水産会」が設置された。
 水産組合は「同業組合の性質を有し、組合員たる同業者間の弊害矯正又は利益増進」を目的としたのに対し、水産会は「広く公益的一般的に水産業の改良発達を図る」ことを目的とした団体であった(『福井県水産組合報』五三)。したがって、同会は漁業者だけでなく水産製造業者・販売業者を含んだものであった。同会の設立により水産組合の事業の大半は同会に引き継がれ、水産組合の役割は限定されたものとなった。
 『福井県水産会報』によって、県および郡市水産会の活動をみてみよう。県水産会の「大正十二年度事業報告」によれば、1朝鮮半島北部沿海漁業調査、2施設改善を目的とした県下七漁村の調査、3小型発動機漁業・巾着網漁業・魚市場・カマボコ製造などの県外視察、4県水産試験場・県水産会技師を講師とする県下九漁村での水産講話会、5貯氷庫、サバ節・味付スルメ製造、岩海苔養殖の事業奨励などを行っている。県水産会の活動の柱は、調査、視察、事業奨励、講話・講習会の開催にあった。さらに、県水産大会をたびたび開催し、会員の連携をはかるとともに知事あてに請願も行った(資11 二―四一)。十五年度からは、漁村振興資金貸付事業(毎年三万円)をはじめ、漁業組合・町村などの一定事業への貸付が実施された。郡市水産会は県水産会と連携しながら、県水産会と同様の事業を営むとともに各郡市の状況に応じて、水産品評会、発動機機関士講習会なども行った。
 このように水産会は、新漁法・漁具の紹介、発動機船化の奨励、漁村風紀の矯正、水産製造の改良、水産物の販路拡大などの諸事業によって、大正中期から昭和戦前期にかけての福井県水産業において重要な役割を果たしていたのである。 写真159 『福井県水産会報』

写真159 『福井県水産会報』




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