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 第三章 明治期の産業・経済
   第二節 絹織物業の勃興
    三 その他の地域産業
      本県工鉱業の特色
 明治七年(一八七四)の「府県物産表」によると、敦賀県の生産物構成は、農林水産物六一・三パーセント(全国六八・九パーセント)、工鉱産物三八・七パーセント(全国三一・一パーセント)で、商品経済化の進展度がやや高く、とくに釘・鋲などの生産額が高い位置を占めている。その後、資本の本源的蓄積過程となる松方デフレ期=紙幣整理期を経て、二十年前後から四十年初頭にかけてのいわゆる産業革命期に、輸出向羽二重を中心とした絹織物業がとびぬけて発展した。しかし、重化学工業は阪神・京浜両地帯に偏倚的に形成されるというわが国産業革命の特質に規定されて、福井県には機械工業はまったく形成されず、農業と軽工業である繊維工業を柱とする地域構成になった。そこでその他の地域産業の分析視角として、絹織物業を除く工鉱業を、資本主義的発展をとげた製糸業・産銅業と在来産業に分けて、それぞれの生産と流通を中心に特色を浮き彫りできるよう接近してみよう。



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