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 第三章 明治期の産業・経済
   第一節 農林水産業の発展
     四 林業行政の展開
      公有林野の整理
 日露戦争後、町村は国政を遂行する末端行政機関としての性格を強く付与され、部落の割拠主義がその障害となることが明らかになった。そこで、その経済的基礎をなす部落有林野を町村に移し、同時に入会権も整理して造林地を拡大し、町村の基本財産造成にも役立てる、公有林整理政策が開始されたのである。
 福井県では明治四十三年(一九一〇)四月の郡市長会の際、県は部落有財産整理統一にいっせいに着手するよう指示し、七月に各郡ごとに整理統一方針を定め、各郡長が町村長を督励した。統一は「部落より経営能力の一層強大であるところの市町村に林野の所有権を移」すことであり、無償無条件を目標として指導された。この政策の支えとなったのは、四十四年の市制、町村制の改正により、部落が新たに財産を取得することが否定されたことである。福井県の四十四年末の公有林野面積は表116に示したように四万三〇〇〇余町歩、このうち部落有林野は約二万五〇〇町歩である。この部落有林野は県や郡長の強力な指導により大正二年末現在で約一万八五〇〇町歩が町村へ提供または譲与されている。



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