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 第四章 飢饉と一揆
   第三節 化政・天保期の一揆
     二 文化・文政期の百姓一揆
      百姓一揆の発展
 化政期の百姓一揆は、中期の惣百姓一揆を継続しながら、新たな展開をみせるようになった。一つは大野郡など、むしろ福井城下から離れた地域で多く発生したこと、もう一つは農村の小商品生産の広がりを背景とする、支配領を越えた広域的な一揆が起こるようになってきたことである。
 農村の商品生産との関係では、勝山地方の百姓一揆にこの特徴がよく表われている。この地方は勝山藩領の外に諸領が錯綜・隣接する所であったが、すでに支配の違いを越えて勝山町を中心とする一つの経済圏が形成されていた。煙草・菜種・繭・生糸などの商品生産が盛んとなり、これらを背景とする新興農民層の台頭によって、勝山町と周辺村方の関係は緊密であった。とりわけ勝山町から西、吉田郡の一部を含む九頭竜川下流右岸部、あるいは左岸部鹿谷郷などにそれが顕著にみられた。
 もちろん、化政期のすべての百姓一揆がこのような特徴をもっていたとはいえない。次の大野藩領で起こった一揆はやや特異な性格をもっていた。



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