目次へ  前ページへ  次ページへ


 第三章 商品の生産と流通
   第二節 鉱工業の進展
     三 打刃物と鋳物
      越前・若狭の鋳物
 中世の越前や若狭では、古代からの土着の鋳物師や畿内などから巡歴してきた鋳物師が、原料の金属や燃料の炭、それに粘土や砂が入手しやすく、交通や販売の便のよい都市周辺において生産に従事していた。吉田郡松岡町窪・志比境、武生市五分市町、敦賀市鋳物師町、小浜市金屋には当時の鋳造品や文献が多く残されている。
 元禄十三年(一七〇〇)の「名物釜名寄」によれば、古くから越前で作られる芦屋釜は有名であり、とくに越前上作として三点が記され、茶の席で珍重されたようである。享保三年(一七一八)刊行の「万宝全書」の中に「越前釜 東山時代」とあり、中世から越前芦屋釜が鋳造された可能性が強い。越前の丹南地域に残されているいわゆる五分市釜は越前芦屋釜と同系統のものと考えられている。



目次へ  前ページへ  次ページへ