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 第三章 商品の生産と流通
   第二節 鉱工業の進展
     二 越前和紙
      奉書紙の製法
 楮は旧暦の十月中より冬至頃までに切り採られる。それを釜で蒸して皮を剥ぎ天日に干して黒皮を作る。これを川水に浸し、足で踏んで揉み荒皮を落とし、包丁で上皮や節きずなどをこそげて取って白皮にし天日で干しあげる。次にこの白皮を水に浸し、木灰汁を入れて煮た後、水に入れて黒や赤の筋や屑などを取り除く。これを紙麻といい、厚い木板の上に載せ樫の棒で叩き、袋に入れて川水で洗い木灰汁をすべて流し出す。漉き舟に水と紙麻と米糊を入れ、木の板(たてぎ)で攪拌し更に楡(ねり、ニレの木の皮)を入れて攪拌する。紙漉きの原料が出来上がると、クサマキの木で作った桁に簀をはめたもので掬い上げ、前後に揺り動かし繊維をからみ合わせながら水を濾過し、紙の厚薄を見て上水を向こうへ流し捨てる。これを流し漉きという。漉きあげた濡紙は一枚ずつ藺がらを紙の端へ挟んで積み重ね、重石で圧搾する。絞った濡紙を一枚ずつ剥ぎ取り、桂の板の両面へ刷毛で張付け干場で干す。板を裏返し干し上がった紙を剥ぎ取り、これを選別・裁断して商品にするのである。



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