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 第三章 商品の生産と流通
   第一節 都市構造の変化
    三 在郷町の発達
      越前・若狭の在郷町
 在郷町は在町・郷町などとも呼ばれ、江戸時代農村部に成立した商工業集落である。越前・若狭では、平野部や山間部・沿岸部など異なる地域の物資の集散地であることが多く、ほとんどが街道に面した交通の要衝に立地していた。また、中世あるいは近世初期の城下町から変貌した町もあった。
 最も典型的な在郷町と考えられるのは、今立郡粟田部である。また、坂井郡金津・足羽郡東郷・南条郡今庄・三方郡佐柿・大飯郡本郷・同郡高浜は宿場町の性格を色濃くもっており、吉田郡松岡・丹生郡吉江は城下町から在郷町に次第に変貌したものである。このうち、郷帳など領主側の史料に一貫して「町」としてでてくるのは、北金津だけであり、残りは「村」である。また、松岡は窪・室・椚の三か村から召し上げた土地に、吉江も杉本・西番・牛屋・米岡の四か村から召し上げた土地に立地していたため、郷帳には現れないが、訴訟関係の文書や福井藩の触、越前国絵図などには「町」と記されている場合が多い。



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