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 第一章 藩政の推移
   第一節 所領構成の変化
    四 福井藩の預所
      支配の組織と経営
 一〇万石を超える広域の預所を万全に管理するには、それに対応できる農政組織が必要である。享保五年七月十三日付の「御預所役人覚」(松平文庫)によると、所務方請込役一人、切支丹宗旨改并目付役一人、郡方役人一人、代官四人、所務方下役吟味方一人、徒目付一人、手代共二〇人、足軽二四人の合計五三人が預所担当として幕府に報告されている。「諸役年表」(松平文庫)では所務方請込役人を元締役、切支丹宗旨改并目付役を単に目付、郡方役人を郡奉行、所務方下役吟味方を勝手請込としている。なお、手代・足軽について福井藩においては前者を下代、後者を組之者と称していた。
 これらのうちで支配の中心になるのは、元締役・目付・郡奉行である。元締役には知行二五〇石の鈴木彦大夫が任用された。元締役を補佐したのは勝手請込で地方巧者から選ばれ、後に預所の代官に登用された者もいる。元締役には下代二人と組之者六人が付属していた。元締役の主たる任務は年貢の徴収にあったので直接徴税に当たる代官もその指揮下にあった。代官四人にはそれぞれ下代四人がつけられていた。監察に当たる目付には知行二七〇石の井上半大夫が任命された。目付を補佐したのは徒目付で、組之者六人も付属していた。郡奉行には二〇〇石の江口次郎兵衛が就任している。郡奉行には下代二人と組之者一二人が付属していた。
 享保八年一月、元締役の鈴木彦大夫は幕府より時服三を拝領するという破格の栄誉をうけている。「家譜」にも「御預所之御方十余輩有之候得共何之御沙汰無之御家斗之旨、古今無類之事也」と評され、預所を順調に支配したことがうかがえる。



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