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 第五章 宗教と文化
   第五節 建築物と絵画
    三 民家
      地域別にみる民家
 福井県下における民家の調査が体系的に実施されたのは昭和四十三年(一九六八)のことで、福井県教育委員会の調査として奈良国立文化財研究所によって行われた。この緊急調査で多くの貴重な民家が発見されたが、表142の重要文化財の民家の指定年の多くが昭和四十四年であることもその調査との関連を示している。この調査の報告書は昭和四十五年に『福井県の民家』として刊行された。
 建築物は風土の影響を強く受けるが、とりわけ民家において著しい。前掲の『福井県の民家』では嶺北地方に分布している民家について、南から北へ越前T型・越前U型・越前V型に分類し、その特色を明らかにしている。

表142 重要文化財の民家

表142  重要文化財の民家

 越前T型は嶺北地方南部に分布する民家で、堀口家住宅・相木家住宅・旧谷口家住宅がそれに相当する。堀口家を例にあげると平面の西半分がニワであり、東半分の前三分の二が土座のオイエ、後方三分の一が板敷のカミノマ・ナカノマの二室になっている。平入で、その建坪は三五坪である。
 ニワは屋内の土間部分を指している。オイエは一般にはオウエといい、オエ・オユエともいわれている。板床を指すこともあるが、土座の場合が多い。土座というのは床板を張らずに土間の上に籾殻を敷き、莚を広げて居間としたものである。
 次いで越前U型は、嶺北地方の中央部の福井市や大野市などに分布している。表142の大野市宝慶寺の旧橋本家住宅がそれに当たる。間口六間・奥行四間の母屋に、ウマヤと棚が下屋として付設されている。入口の四間四方はニワと称され、大部分が土座であってその一角の一坪半がハクモンバと呼ばれて土間となっている。したがって土座の部分はオイエと考えることもできる。ニワの奥には板敷の上ザシキ・下ザシキがある。
図031 堀口家住宅平面図1:300(修理工事報告書より)

図031 堀口家住宅平面図1:300(修理工事報告書より)


図032 旧橋本家住宅平面図1:300(修理工事報告書より)

図032 旧橋本家住宅平面図1:300(修理工事報告書より)


 越前V型は、越前の北端坂井郡一帯に分布している。後述する坪川家住宅がその典型であるが、ニワに接して間口いっぱいのオエがあり、その奥に各室が配置されている。



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