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 第五章 宗教と文化
   第四節 文化の諸相
     四 村と町の年中行事
      二月・三月の行事
 二月最初の午の日は初午といい稲荷を祭る行事であるが、花倉家では寺参りをするのが恒例であった。七日は大野城下の産土神を祭る清滝社の祭礼で、一年おきに神輿も繰り出される盛大な祭であり中野村の農民も見物に出かけた。暑さ寒さも彼岸までといわれるように、二月も下旬になると、屋内での藁仕事中心の労働から、次第に屋外での農作業を主体とした労働に移っていく。籾種漬けから始まって、苗代拵え、麻畑打ちなどが続く。
 三月二日は宵節句といって、草団子にきなこをかけて食べた。翌三日は雛祭で農良仕事は休み、前日と同じく団子を食べた。四日は人別改で、宿は花倉家が勤めることが多く、また大野藩では六年に一度はおおがかりに行われた。十八日は黒谷観音堂、二十一日は篠座社と大野盆地を代表する例祭が続く。また、防火の霊場である秋葉山などの霊場巡りの代参が、農閑期を利用して出発するのもこの時期である。なお、代参が帰国すると家来たちにも酒が振る舞われた。二十九日には早稲の田植が早くも始まり、五月中旬までには晩稲の田植も済ませた。



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