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 第五章 宗教と文化
   第一節 越前・若狭の寺社
    四 越前・若狭の寺社
      三方郡の寺院
 延宝三年の小浜藩寺社改のさいに領内すべての寺庵・社堂から由緒書が徴されたが、それをまとめたものが「若州管内社寺由緒記」(以下「由緒記」と略記)として残っている。同書には村々に所在する多数の庵や堂のほか、当時すでに廃寺となっていた寺の寺号も若干記されているので、それをもとに近世前期における若狭三郡の寺庵の概況を知ることができる。
 三方郡では曹洞宗の金山竜沢寺・佐柿徳賞寺・佐田芳春寺・田上常在院・三方臥竜院が中世以来教線を伸張させており、郡内の曹洞宗寺庵のほとんどがこれらの寺院の末寺・孫末寺であった(「若狭郡県志」)。右の五か寺のうち、徳賞寺と臥竜院は南条郡の春日野盛景寺末であった。禅宗寺院の展開に対し、真言宗寺院の宮代園林寺・成願寺村成願寺は中世では多くの寺坊をもち栄えたものの、太閤検地などを契機に衰退した(「由緒記」)。なお、「由緒記」にみえる郡内の真宗寺院は一〇か寺で(現在一九か寺)、そのうち天正期(一五七三〜九二)以降創立の由緒をもつ寺は四か寺(ほか由緒・創立期不明三か寺)であり、郡内では近世に入ってからの真宗寺院の成立が顕著であったとみられる。

表126 若狭三郡の寺院分布

表126  若狭三郡の寺院分布
                  注1 遠敷郡の(  )内は小浜町の数.
                  注2 「若州管内社寺由緒記」により作成.



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