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 第四章 都市と交通の発達
   第三節 街道と宿駅
    三 宿駅の負担と助郷
      通行の準備
 四、五日前に御宿拵衆が来て準備にかかり、本陣と下宿の宿割や宿泊料の交渉をする。宿場内には敷砂盛砂をして水を打ち、松明を用意し、休泊の家では障子の張替えと畳の入替えなど、多大の費用をかけ莫大な人馬を動員したのである。止宿の当日は、宿場の入口と本陣の門前に大名の名前と泊・休の別を書いた大きな宿札を立て、他の一行との差合いを避けた。本陣の表門や玄関には紫縮緬の大名定紋入りの幕を張り、定紋の入った提灯をたてる。大名行列の接近状況は遠見の者より報告があり、宿役人や本陣・下宿の亭主などは宿場の手前で平伏して出迎えた。大名は宿料以外にも宿役人と村役人に下物を残したが、文化十一年に加賀藩主が鯖波宿に小休止した時には、本陣一人・問屋二人に金一〇〇疋ずつと庄屋一人・百姓三人・人足支配五人に白銀一枚ずつを渡している(石倉家文書)。



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