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 第四章 都市と交通の発達
   第一節 城下町とその構成
    四 城下町の生活
      巡見使との問答
 この時の藩からの注意書きには、巡見使を殿様と呼ぶ、下荒井船渡からの案内が来るまでは宿に留め置く、近郷・枝村で失火などの節も騒がないなどが記されている。
 また、巡見使から質問された時の「御返答覚書」が二九か条、これとは別に「もし尋ねられたら次のように答えよ」という回答例が一八か条にわたって記されている。この中には宗門改、領内の平均免、大野町の免、町方家数人数、在方家数人数など確答できるもののほか、次のようなものもあった。
 問「藩主は何を好むか」答「もっぱら武芸を好みます」
 問「藩主は遊山に出るか」答「折々鉄砲・乗馬または川狩などに出ます」
 問「家中に今はやっているものはあるか」答「武芸に励むことです」
 問「御勝手の儀はどうだ」答「収納宜しからず、米の値段が低い所なので、ことのほか不
   勝手らしいです」
 問「町方に御用金・御頼金は」答「町の重立った者や年寄にて才覚し用立ていたします。
   その他京都などにも用立てる者があると聞いております」
 問「芝居はあるか」答「普段はありません。領民の願いにより許可されることもあります」
 問「宿の修覆・器物などは藩主から『御馳走』をせよと仰せ付けられたのか」答「そんなこ
   とはありません。有合わせを繕って間に合わせただけです」
 問「宿に集まっている者は藩主から命じられたのか」答「そんなことはありません。亭主
   の一家やその他懇意の者たちです」
 これらの回答例にない質問については、「はっきりとしたことはわかりません」と答えよと最後に書いてあり、領主側では、なるべく巡見使に領内のことを知られないようにしようとした様子がうかがわれる。



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