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 第四章 都市と交通の発達
   第一節 城下町とその構成
    四 城下町の生活
      巡見使の到着
 四月九日、巡見使は八つ半時(午後三時頃)に到着した。大久保忠救一行二九人は、下宿を使用せず全部が本陣に宿泊し、筑紫于門一行四六人は、本陣に一九人、下宿に二七人、堀直安一行三一人も本陣鍋屋に一三人、下宿浜屋へ一八人が分宿した。
 浜屋での一行は、まず風呂に入った後、食事をとり床をとった。朝は六つ時(午前六時頃)より食事を出した。献立は、夕食が「大皿ニ香の物もり込 汁 めし」、朝食が「平 引テ香之物 汁 めし」で、酒は朝夕ともに出さず、床の間には掛軸も掛けず、花も生けなかった。夕方ゆかたを出しても誰も着なかった。このように、かなり質素であったので、浜屋の当主は「扨々きひしき事」と記している。
 翌朝、順調にことを終えた鍋屋と浜屋は喜び、奉行にお礼の挨拶に行き、その後、給仕人・料理人・小使の者へ酒・肴も出して昼飯を振舞い、ともに喜んだ。十二日には浜屋では嫁の出産があり、二重の喜びであった。
 後片付けは十一日から始めたが、十九日の夜に九五三軒を焼失するという大火があって遅れ、浜屋では六月十七日になってようやく諸帳面を片付けいっさいの仕事を終えた。



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