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 第四章 都市と交通の発達
   第一節 城下町とその構成
    三 城下町の商工業と町人の負担
      商人の心構え
 全国的には大名貸を戒めた三井家の家訓が有名であるが、大野の七間町にあって年貢諸役を免除された御免地町人であった布川家の「商人売買考」(布川源兵衛家文書)からも、当時の商人の商売に対する考え方がうかがえる。
 これは、天明七年(一七八七)に当主茶屋新右衛門が覚のために記したものと思われるが、「大豆や小豆・大麦・小麦・蕎麦・稗など値段が安くとも必要以上には買うな」「米や蝋・菜種などで儲けた話を聞くとうらやましいものであるが、一方では損をした話もあるので油断するな」「すべて物を仕入れる場合には自分の財布と相談して決めよ」「商いには損得は付き物であるので後悔はするな」「塩など船で来る品物には値段の高下があるのでよくよく考えて仕入れよ」などと書かれている。一獲千金を夢みるような商売を戒めていることがわかる。



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