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 第四章 都市と交通の発達
   第一節 城下町とその構成
    三 城下町の商工業と町人の負担
      府中の商工業
 府中の商工業は、宝永元年(一七〇四)十月の御用金割を記した史料(「諸記録」武生市史編さん室保管文書)の屋号から推測することができる。記されているのは三一三人であり、そのうち約半数の一五五人が職業に関係する屋号をもっている。屋号がすべて職業に結び付くわけではないが、おおよその傾向はつかめるであろう。
 これによれば、職種は四二あり、衣類関係には紺屋・布屋・木綿屋・傘屋・小間物屋があり、食品関係には魚屋・茶屋・米屋・油屋・塩屋・飴屋・素麺屋・煙草屋・糀屋・豆腐屋・麦屋・酒屋・餅屋などがあった。住居関係のうち、建築関係には大工・畳屋・木屋・竹屋・桧皮屋があり、調度・雑貨関係には紙屋・鍋屋・桶屋・土器屋・蝋燭屋・扇屋・唐物屋・桧物屋などがあった。府中は鍛冶業が盛んであったので、鍛冶屋・鎌屋・鉄屋などもあった。
 数の多いものの分布をみると、一一人を数える魚屋は、本町に四人、油在家町(のちの室町)に二人、同じ一一人の紙屋は新町に六人、本町に三人というように北陸道に沿った町に集まっていた。しかし、同じく一一人の紺屋は今道町五人、竹ケ花町三人というように中心からすこしそれたところにあった。九人を数える鍛冶屋は、柳町・上市町といった町の南部に六人が集中していた。



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