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 第三章 近世の村と浦
   第四節 越前・若狭の浦々
    四 塩田と塩木山
      若越の浦々
 三二万石の福井藩、一〇万石の小浜藩にあって、領国市場を固く守り、全国市場の圏外に在り続けることは困難であり、特別強力な保護策は取りえなかった。こうした諸条件のもとでの若越の塩業は、農業や漁業との兼業で成立していたし、また逆に農・漁業も、塩業を兼業することでしか成立しなかったのである。
 若越の浦々は、農業・漁業・塩業、さらに廻船業や酒造業など各種産業が互に補完しあって成立しており、その組合せは多様であった。若越の浦々を規定した二つの自然的条件は冬期の積雪・荒海と京畿に近いことであった。前者は通年型の生産活動を不可能にし、後者は全国市場が成熟する近世中期以降は近世初頭ほど有利には作用しなくなっていたのである。



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