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 第六章 「地方の時代」の諸問題
  第一節 地域開発施策の展開
    五 合併後の市町村行政
      道路・生活環境施設の整備
 県内の広域市町村圏の行った事業内容について、ここでは福井坂井地区広域市町村圏についてみてみよう。福井坂井地区広域市町村圏は一九七〇年(昭和四五)三月に「広域市町村圏計画」、八一年三月に「新広域市町村圏計画」、九一年三月に「第三次広域市町村圏計画」を設定し、事業を進めてきた。「広域市町村圏計画」では、基本計画として交通・通信(一、二級市町村道・都市計画街路・広域林道・農免道路)、防災(消防・救急)、住宅および生活環境施設(上水道・下水道、し尿処理・ごみ処理・葬祭施設等)、保健衛生、社会福祉、教育文化、農林漁業、工業開発、観光レクリエーション、行政の合理化(広域情報処理センター等)などの項目による立案を行った。「広域市町村圏計画」の総額五二五億円のなかで、交通・通信が五一・二%、生活環境施設が三四・七%で、この二つで八五・九%を占める。とくに道路、上水道(全体の一三・二%)、公共下水道(全体の一八・五%)に重点をおいている。
 これらの事業の進展状況を「一次計画」「二次計画」「三次計画」の現状報告をもとにみてみよう。表160は道路と上水道(簡易水道を含む)の事業の進展状況である。道路については、「一次計画」の期間中に拡幅改良率や舗装率が大幅に上昇し、整備が進んだことがわかる。とくに市町村道路の充実が著しい。上水道も「一次計画」でおおむね全体への普及を実現したといえる。

表160 福井坂井地区広域市町村圏の道路・上水道整備事業

表160 福井坂井地区広域市町村圏の道路・上水道整備事業
 下水道については、七〇年の「一次計画」の段階では福井市だけが公共下水道を設置していた。敗戦直後に就任した熊谷太三郎市長が戦災復興都市計画事業に取り組むと同時に、下水道建設に熱心に取り組み、四七年一一月に国の認可をうけ、福井市は戦後全国ではじめて下水道事業を実施する都市となった。この事業は戦災都市の「特別都市計画法」の事業の一環として優先的に施工が認められたため、福井市は四八年から工事を開始し、市予算では下水道を都市計画、学校建設とならぶ重点事業の一つとして多くの金額をこれにあてた。福井市の六七年の下水道普及率は六六%で全国平均の二九・六%を大きく上回って全国的な注目を集め、毎年各都市から多くの行政視察者が訪問した(『新修福井市史』2)。
 七〇年の「一次計画」の時に公共下水道をもたないその他の都市部では、市街地・工場地帯からの汚水によって、日野川、竹田川、足羽川、九頭竜川の水質が汚濁するという問題が生じていた。そのため、あらたに公共下水道の計画が策定された。七三年四月に坂井郡六町を対象地域とする坂井郡水道用水組合が、八三年二月には松岡町、丸岡町を対象地域とする五領川公共下水道組合が設立され、下水道の整備が進んだ。また永平寺町も観光地の環境保全をはかるため特定環境保全公共下水道計画を進めた。九一年の「三次計画」段階では、下水道の人口普及率は福井市五三・〇%、坂井郡六町三二・七%、永平寺町五一・三%、清水町二八・五%となっている。下水道の整備は巨額の費用を必要とするため、地域住民の合意を得ることが不可欠であり、その整備には時間のかかることが多い。とくに農山村地域の整備は今後の大きな課題である。
 し尿処理については、七〇年の「一次計画」では福井市が下水道と終末処理場を設け、市外からの委託分も処理していた。三国町、金津町、芦原町は六一年一月に三国・芦原・金津環境衛生組合を設置し、越廼村、清水町は六二年五月に丹生郡各町村が設置した丹生衛生管理組合に加入した。その後七三年七月に坂井郡六町が坂井郡環境衛生組合を設置し、美山町、松岡町、永平寺町はこれに委託を行った。七六年四月に上志比村は勝山市と勝山・上志比衛生管理組合を設置した。
写真107 福井市汚水処理場

写真107 福井市汚水処理場

 ごみ処理については、七〇年の「一次計画」段階ではごみ処理施設を独自にもつのは福井市、松岡町、永平寺町だけで、共同処理を行うのは三国、芦原、金津の三町と丸岡、春江、福井の三市町で、処理の委託を行うのが坂井町という現状であった。その他の町村は処理自体にも手をつけていない状況であったが、ごみ処理の必要性は増大していた。その後、各地でごみ処理場の建設が進んだ。福井坂井地区広域市町村圏事務組合(福井市、美山町、松岡町、永平寺町、上志比村、坂井郡六町)は七三年八月に粗大ごみ処理施設、七四年七月にごみ処理施設を建設し、七一年四月に設立された永平寺上志比環境衛生組合は六九年一一月設置のごみ処理施設と七一年一〇月設置の粗大ごみ処理施設を使用した。清水町は七二年七月に設立された鯖江・丹生ごみ処理施設組合(七七年四月に越廼村が加入し、鯖江・丹生環境衛生施設組合に改称)に加入した。
 し尿処理施設やごみ処理施設などの環境衛生関係の施設の建設にあたっては、近隣の住民が反対する場合が多く、若狭環境衛生組合(小浜市、上中町、名田庄村、大飯町)では地元の合意が得られず、ごみ処理場の建設を断念し組合を解散した(『地方自治三〇年の歩み』)。
 消防については、七〇年の「一次計画」段階では、常備消防施設をもつ市町村は福井市、三国町、芦原町、丸岡町、松岡町、春江町、坂井町で、「一次計画」では、全域常備消防体制の確立をはかり、金津町、永平寺町、上志比村、美山町、足羽町、清水町、越廼村に常備消防体制をしくことをめざした。六六年七月の福井県嶺北消防相互応援協定により圏域内の消防相互応援協定は整備されていた。六七年七月に金津町、春江町、坂井町が嶺北消防組合を、七〇年一〇月には松岡町、永平寺町、上志比村が吉田地区消防組合を、七一年一一月に福井市、美山町、越廼村、清水町が福井地区消防組合を設置し、広域消防体制の編成が進んだ。これら三つの消防組合のほかに、三国町、芦原町、丸岡町が単独消防本部を保有しており、たがいに市町村消防団との連携を密にして対処した。



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