目次へ  前ページへ  次ページへ


 第六章 「地方の時代」の諸問題
  第一節 地域開発施策の展開
    四 福祉・同和行政の推進
      同和行政の展開
 一九六五年(昭和四〇)八月の同和対策審議会答申にもとづいて、六九年七月、一〇年間の時限立法として「同和対策事業特別措置法」が施行された。同法では、同和問題の解決のための諸施策を迅速かつ計画的に行うことが国・地方公共団体の責務として明示され、同和対策事業に要する経費のうち三分の二を国が負担・補助することなどの財政措置がとられた。これによって、それ以前と比較して格段に総合的な事業が実施されることになった。
 福井県では、七〇年四月「同和対策長期計画策定要綱」を定め、つぎのような基本方針にもとづいて県の長期計画を策定することとした。ここでは、生活環境対策、社会福祉対策、産業基盤対策、職業安定対策、教育対策の五分野にわたって事業を行うものとされた。
 まず生活環境対策としては、公営住宅建設・住宅改修資金貸付などの住宅対策、道路・橋梁・下水排水路などの整備、上水道・簡易水道・五〇世帯以上の地区での共同浴場の整備などがあげられた。
 また社会福祉対策としては、五〇世帯以上の地区での隣保館の建設と社会福祉関係施設の併設、保育所の整備、ボランティア活動の推進が、産業基盤対策としては、運転資金等の特別融資、経営診断・指導の優先的な実施、共同作業場の設置、農道・潅漑排水・圃場整備の促進などが示された。職業安定対策としては、中小零細企業への特別融資や雇用主への啓発、教育対策としては、同和教育の推進に必要な福祉教員の増配、進学奨励資金の支給、教職員の理解を深めるための研修会・講習会の開催、同和教育研究校の指定、同和教育推進地区の指定、社会教育指導への研修の実施などが示された。
 県と市町村の連絡協議機関として七〇年一〇月には、福井県同和対策協議会が設置され、七一年六月に厚生部福祉課に同和対策に関する連絡調整をはかり、環境(地方)改善対策を行う同和対策係を設置した。翌年四月には、同和対策室が厚生部福祉課内に設けられた(『福井県教育百年史』4、七二年県規則第三一号)。
 同和対策事業特別措置法は、七八年一一月に三か年の延長が決定され、その後は八二年「地域改善対策特別措置法」(五か年時限法)、八七年「地域改善対策特定事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」(五か年時限法、九二年改正)といった一連の特別措置法に引き継がれた。
 この間市町村では累計額で、物的事業(住宅・道路・下水道・公園・集会所などの環境整備)に六二・四%、非物的事業(経営相談・資金融資・職業指導・教育啓発活動など)に三七・六%が費やされ、財源内訳では市町村費が五八・五%におよんでおり、実際には自治体の財政負担がかなりの割合にのぼっていた(表159)。これによって、とくに住環境や道路・下水排水路などの生活環境面での改善は大きく進展したが、なお必要な生活基盤整備を進めるとともに、同和対策審議会答申のいう人びとの観念や意識のうちに潜在する心理的差別の解消については、さらに継続的な教育啓発活動を必要としている。八九年(平成元)一月の「福井県新長期構想」では、学校教育や社会教育をとおして県民一人ひとりに人権意識をはぐくむ意識啓発を行うとしている(『福井県新長期構想』)。

表159 同和対策事業の歳出決算額

表159 同和対策事業の歳出決算額



目次へ  前ページへ  次ページへ