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 第六章 「地方の時代」の諸問題
  第一節 地域開発施策の展開
    四 福祉・同和行政の推進
      コミュニティ・ケアと在宅福祉
 一九七〇年代初頭に示された、経済成長の持続を前提として西欧諸国なみの社会保障を整えていこうとする政策は、まもなくおこった一九七三年(昭和四八)秋の石油危機後の低成長経済への移行に対応して見直しの議論がなされることになった。八〇年代に入ると過剰な治療による医療費支出の増大に歯止めをかけるために、「老人保健法」(八三年二月施行)が制定され、これによって、七〇歳以上の老人医療は一部負担となった。また八四年には退職者医療制度の創設と被用者保険本人の給付率が全額から九割に引き下げられた。さらに八六年四月から基礎年金制度が創設された。
 こうした国の社会保障政策の転換のなかで、福井県でも七八年の「第三次福井県長期構想」では、施設の整備とともに国・県・市町村・民間団体の機能分担と調整による「効率的な福祉施策」の推進がうたわれた。しかし県下では七〇年代に入ってようやく本格的な施設整備が進行しはじめたばかりであり、「長期構想」においても具体的な施策としては施設整備は依然主要な位置を占めており、高齢者・障害者・児童福祉施設のいずれもで入所を必要とする者の「全員入所」が課題とされた。
 具体的には高齢者福祉では、健康づくりや生きがいのある生活のための市町村の老人福祉センターの機能の充実、家庭奉仕員の増員や医師・保健婦・看護婦の訪問サービスの増強による在宅福祉の充実、入所を必要とする高齢者の全員入所が目標とされた。
 障害者福祉では、早期発見・早期療育のための総合的施設の整備(小児療育センター)、在宅福祉の拡充、ボランティア育成と社会参加の促進、施設入所を必要とする障害者の全員入所が示された。
 児童・母子福祉では、児童館や児童遊園などの地域環境の整備、保育に欠ける児童の保育所への全員入所と乳児保育・障害児保育などの保育内容の充実が課題とされた。
 こうした地域活動を前提とした在宅福祉サービスの充実は、八三年の「第四次福井県長期構想」でより明確に位置づけられた。福祉施策は「健康でうるおいのある社会づくり」の一環としてコミュニティづくりとともにまとめられ、こうした構成は現行の総合計画である「福井県新長期構想 福井21世紀へのビジョン」へと引き継がれている。



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