目次へ  前ページへ  次ページへ


 第五章 転換期の福井県
   第二節 県民生活の変容
    四 教育機会の拡大
      高校の序列化
 初等技術者養成のための職業科高校の設置が促進された一方で、高等教育機関への進学にとっては、普通科がより優位なコースとなっていく。高校生徒急増期の一九六三年度(昭和三八)は、進学と就職のコース別の新学習指導要領が実施された年度でもあり、普通科高校のなかには大学進学への効果的な指導をねらった能力別学級編制を行ったり、一・二年生から補習授業を実施する学校が増加した。藤島・高志高校ともに六二年度から一年生に対して課外授業を開始していた。各普通科高校で進学指導部や進学委員会などの校内の進学指導体制が整備されたのもこの時期であった(『福井県教育百年史』4、県立藤島高校『百三十年史』、『高志高校三十年史』、『大野高校八十年史』)。
 さらに六九年度には高志・武生高校、七〇年度には若狭高校に理科・数学の単位数をふやした理数科がそれぞれ一学級設置された。これは、設備の半額国庫補助をともなって、前年度から全国的に設置されはじめ、理数系に比重をおいた能力別学級編制を制度化したものであった。普通科との併願が認められたこともあり、当初は高志・武生高校では二・五倍をこえる高い倍率となっていた(『福井新聞』68・10・15、69・2・8)。
 一方職業科の大学進学率は表127にみるように、五〇年代なかばから漸増していたが、普通科との格差はしだいに広がっていた。このため、県は六九年四月に清水英夫福井大学教育学部長、藤原長司県産業教育審議会長ら学識経験者や高校長、中学校長、PTA代表ら二一人の委員による「福井県立高等学校教育問題協議会」を設置した。同協議会は、五八年度から実施している大学区制の再検討、ここ数年の入試での「A校の最高点でもB校の最低点を大幅に下回るという極端な格差」から生じる弊害について改善策を答申することを目的としていた(『福井新聞』69・5・7)。

表127 高校学科別の大学進学率

表127 高校学科別の大学進学率
 同協議会では、一〇〇〇人をこえた学校規模を適正化するための高校増設、非行化防止のためのクラブ活動の振興、調査書(内申書)の重視、福井市内普通科高校の総合選抜制の実施などが議論されたが、学級定員の四〇人への逐年低減や教員配置の改善がなされたものの、学校間格差の解消のための積極的な施策は実現されなかった(『福井県教育百年史』2)。



目次へ  前ページへ  次ページへ