5 「文明開化」の波(3)
洋服裁縫調進所(福井佐久良中町 共隆商店)1
洋服裁縫調進所(福井佐久良中町 共隆商店)2
 ▲洋服裁縫調進所(福井佐久良中町 共隆商店)
 2枚ひとつづきの画。石造りで瓦葺きの和洋折衷の建物。右手の裁縫職工場には、筒袖の洋服らしき作業衣を着た職工が
 何人もいる。左手のガラス灯が掛かった店頭には、テーブルやイスが置かれ、ウインドーに洋服が何枚かかけられている。
 また、看板には「Fukui Japan」の英字がみえる。                   『福井県下商工便覧』 福井県立博物館蔵
■『福井県下商工便覧』
 同書は、1887年(明治20)7月に大阪府堺区の印刷所龍泉堂から発行された。府県あるいは都市別の「商工便覧」シリーズの1つで、福井県内の商工業者や医者などを紹介した携帯用の小冊子。250枚あまりの銅版画からなり、近代をむかえて間もない市街の光景が、細密な線描でとらえられている。そこには、「開化」がもたらしたさまざまな新事物、新風俗をみることができる。郵便箱、電信柱、人力車、石油ランプを用いたガラス灯、写真・牛乳・印刷・洋服・洋物を扱う各店、生糸製糸場、絹織物工場など、新しい事物・商工業の進出ぶりがうかがわれる。なお、同書にも断り書きがあるように、建物はかなり誇張して描かれている。
松谷洋物商店(福井佐久良上町)
▲松谷洋物商店(福井佐久良上町)
看板に「欧米服裁縫」とあり、その上に「Garment(衣頻)」まで判読できる英字が記されている。店内左右には、ミシンで
裁縫する人物がみえる。商品として、帽子、傘、ランプ、衣服などのさまざまな洋物類が並んでいる。
薬舗・医師(福井足羽上町 岡本直栄女・昇)
▲薬舗・医師(福井足羽上町 岡本直栄女・昇)
建物の手前には、雨よけの傘をかぶった電信柱に電信線が走っている。レンガ造りの建物は屋根が瓦葺きで、当時
の和洋折衷の建築様式がよく表れている。屋根には雪止め鎖が張り巡らされ、左手の入口にはガラス灯が掛かって
いる。

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