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 第三章 占領と戦後改革
   第二節 政治・行政の民主化
    二 地方行財政機構の改編
      行政機構の再編
 敗戦後の社会情勢への対応と戦後改革にともなう大幅な事務配分の変更により、地方自治体の行政機構は大きく改編された。県庁機構の変更からみてみよう。なお、表68は、敗戦前後、地方自治法施行直後、ならびに戦後の機構改革がほぼ一段落した一九五一年(昭和二六)五月のそれぞれの時点における県庁機構の概要を示したものである。

表68 県庁機構の変遷 

表68 県庁機構の変遷 
 まず、兵事関係の事務は消滅し、県庁内政部におかれた社寺兵事課および戦時保護課、戦時行政企画室は敗戦後四五年九月に、それぞれ厚生課、総合企画室に組織変更となった。また一〇月には警察部の特別高等警察課も廃止された。警察部はさらに労政関係の事務が一二月に内政部(翌四六年二月に内務部と改称)へ移管となったのち、四八年三月の「警察法」の施行にともない独立行政委員会である県公安委員会所属の国家地方警察福井県本部として、県庁機構の外に出されることになった。
 つぎに、戦後の民生行政の重要性の高まりを背景として、四六年一一月、社会福祉、保健衛生にかかわる厚生行政および復員事務、警察から切り離された労働行政、さらに教育行政を管掌する教育民生部が設置された。しかし、中央の省庁の改編も影響して、四七年一二月に衛生課が独立して衛生部となった(五一年五月、医務部に改称)のを皮切りに、四八年一月には教学課が教育部として独立し、労政・職業両課が経済部の管轄に入り、残りの厚生・保険・第一世話・第二世話の四課が民生部(五月に児童課新設)となった。教育部については、四八年七月の「教育委員会法」の制定にともない、警察同様に、独立行政委員会である県教育委員会の事務局機構として組織変更となった。
 経済関連行政については、まず農地改革の実施に関連して、四六年一一月、農地改革事務と開拓事業にかかわる事務を管掌する農地部が新設された。この農地部には、のちに土地改良事業を分掌する耕地課が四七年四月に、さらに農業協同組合課が四八年五月におかれた。また従来経済部の管轄であった食糧供出・配給、その他農林水産関係の行政事務は、四八年一月に農林部の設置により独立して行われることになった。経済統制が緩和された五〇年六月には、農地部農業協同組合課と農林部食糧課が統廃合され、農林部の下にあらたに農業経済課と農業改良課がおかれることになる。商工関係では四八年五月に経済部商工課から繊維課が独立した。土木行政も従来経済部の管轄にあったが、四六年二月に内政部から名称変更となった内務部に移管となった後、四七年二月に土木部が独立しておかれた。また戦前からおかれていた土木出張所などの出先機関も維持ないし増設された。
 県の出先機関としては、すでに戦時中の四二年七月、県庁機構改編にともない、八地方事務所が設置されていたが、これらは戦後の供出・配給、復員援護、徴税など、町村の業務を指導・監督する役割の重要性から、経済課・税務課・農地開拓課などを配置して存続した。
 戦後改革、復興にともない拡大した、民生・経済関連の行政事務の多くは国政委任事務であり、保健所・職業安定所などの職員のように給与の全額ないし一部を国庫が負担する、いわゆる国庫補助職員も増大した。また国のさまざまな施策と新制度の実施にともなう補助金が増大するとともに、国の縦割り行政のなかに県庁の諸部局も組み込まれることになった。民生関係では保険・医務・職業安定など、経済関係では耕地・林務・畜産などの各課長は関連中央官庁の出向者が多くを占めた。また土木行政については、戦前は、奏任官である地方技師が課長および道路・土木・建築の各事業の担当者として末端行政を掌握していたが、こうした体制は戦後の行政機構でも生き残り、土木部長、道路課長、河港課長などは原則として建設省の技術系吏員の出向ポストとなった。
 市町村においても、民生行政を中心に各種の領域にわたって行政事務が激増した。敗戦直後の四六年一月、市町村における行政整理を励行する旨の内務次官通達が出されたのに対し、小浜町は「本町ハ戦災ヲ受ケザル関係ヨリ、県内ハ勿論他府県ヨリ戦災及疎開者等ノ転入ニ依リ世帯人口共ニ激増シ、之ニ伴フ事務モ亦一躍倍加輻輳」、「戦後ニ於ケル町政、真ニ戦時中ニ比シ益々加重且緊要を加フル現状」として、行政整理は実施困難との報告を行っている(旧小浜町役場文書)。
 各自治体の職制はさまざまであるが、とくに市や町では福祉・衛生関係の行政事務が拡大したほか、選挙管理委員会、監査委員、公平委員会、公安委員会、教育委員会などの各種行政委員会の事務運営の管掌など、行政サービスは質量ともに大きく拡大した。また、こうした自治体行政の周知徹底と住民の自治意識の向上をはかるために総司令部が広報活動の充実に力を注いだこともあり、各自治体では広報紙の発行、移動相談室の実施など、積極的な広報活動への取組みがなされた。福井市では四六年七月に庁内に広報専任の書記をおき、四八年五月には総務課内に情報部を設置している(『新修福井市史』1)。
 このように再編された行政機構のうち、警察・教育行政の改革については別項で扱うので(第三章第二節三、第四節一)、ここでは福祉行政と町内会・部落会などの地域組織についてふれておこう。



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