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 第二章 若越地域の形成
   第一節 古墳は語る
    三 王者の棺―石棺―にみる地域色
      珍しい石棺
 牛ケ島石棺は、棺身に遺骸を入れる部分を刳り抜くために、寸法をとった線刻による刻み目が石棺の頭部小口上端に二か所、脚部小口上端に二か所、右長側面上端に二か所残っている(図27)。普通は石棺の仕上げ段階で、丁寧に削り取られて見ることができないものであるが、消し忘れたと思われるたいへん珍しい例である。それぞれの線刻の幅は、四三センチメートル、二七・五センチメートル、一七一・二センチメートルとなっている。これらの数値から基準単位を求めると二一・四センチメートルとなる。これを一とすると、それぞれは二、一・二五、八となる。粗雑に造られたように思える石棺も、実はきちんと寸法取りをして造られたのである。
図27 牛ケ島石棺の寸法どりの刻み目

図27 牛ケ島石棺の寸法どりの刻み目

 新溜古墳石棺は、身・蓋ともに左右両側に各二個の縄掛突起が造り出されており、全長約二・五六メートル、幅約一・一メートル、高さ約一メートル、重さ約二トンである。この石棺の特徴は、鯨のような特異な形をしていることと、身と蓋の重なり合う縄掛突起四組のなかの一組の平面に、身にX字状、蓋に\字状、両側面にI字状の陰刻がみられることである。縄掛突起の陰刻は、棺内に五〜六体分の人骨が埋葬されていたことから、追葬の際に石棺を開閉するとき身と蓋をうまく合わせるための目印と考えられている。これらは、全国的にみてもたいへん珍しい例である。



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