大本泉氏文学講座「福井をめぐる作家と文学」を開催しました

 特集展示「冬の味わい」関連企画として、2月7日(日)に、仙台白百合女子大学教授の大本泉氏を講師に迎え、文学講座「福井をめぐる作家と文学」を開催しました。講義は新型コロナウィルス感染予防のためリモートで行われました。
 大本氏はまず福井出身の石塚左玄を紹介し、健康と食の深い関わりや正しい食の組み合わせの重要性について述べた「食育」を初めて提唱した方であると話されました。またその影響を受けた人物として村井弦斎や与謝野晶子、平塚らいてうに触れ、彼らも国力の充実や日本女性の脆弱さの改善、体内のバランスを保つために食の大切さを訴えたのだと述べられました。
 後半は福井ゆかりの作家の作品を引用し、福井の食文化が文学の中でどう表現されているかを説明されました。中野重治『梨の花』では、独特な食材や福井ならではの呼び名、食べ方の描写に注目し、当時の福井の農家の食文化がどういうものであったかを読み取りました。三好達治では妻による日々の食の描写を通して、彼の神経質さや二人の心のすれ違いを味わいました。その他「さば寿司」や「甘鯛」の美味を、料理の仕方を含めて詳細に伝えた北大路魯山人、「へしこ」と「かれい」について語ることが母への思いと結びついていく水上勉、「おろし蕎麦」や「越前ガニ」の食事風景を詳細に活写する津村節子、福井の「コシヒカリ」の美味しさをユーモアとともに伝える俵万智など、参加者は多様な食の表現に触れました。
 最後に大本氏は、「これからは食を楽しむことに加え、文学を通しても食を楽しんでいただきたい」と結びました。