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 第六章 「地方の時代」の諸問題
  第二節 諸産業の展開
    六 観光とレジャー
      観光行政の推進
 福井県には、嶺南に、日本海側には数少ないリアス式海岸をようする若狭湾国定公園が広がり、また、敦賀市杉津から石川県加賀市尼御前岬にいたる全長一〇八キロメートルの海岸線は、越前加賀海岸国定公園として、それぞれがすぐれた海岸景勝をほこっている。一方、奥越には福井・石川・富山・岐阜の四県にまたがる白山国立公園と、奥越高原県立自然公園が広がり、近年のアウトドアブームやスキー・スノーボードの流行によって、多くの若者が四季を通じて訪れている。各自治体などが主催するイベントは一年を通じて数多く、冬季には「越前がに」や若狭のふぐ料理を求める観光客もふえている。一九九三年(平成五)現在、県内外から訪れる観光客の総数はのべ約二五〇〇万人にもおよび、消費総額も約七三〇億円に達している(『県統計書』)。
 戦後間もなく県内各地で活発化した観光客誘致の動きともかかわり、県や関係市町村が中心となって嶺南一円と三国・芦原地域について積極的な国立公園指定の陳情運動を行った(『福井新聞』46・11・29、47・1・23)。その結果、前者は五五年(昭和三〇)六月に、全国第七番目の国定公園として指定をうけ、後者は、「福井県立公園条例」にもとづき、五二、五七年に指定された九頭竜・越前海岸両県立公園が、六八年四月に国定公園へとそれぞれ昇格を果たした。なお六二年には敦賀半島が若狭湾国定公園に追加指定され、七一年には福井新港と臨海工業地帯造成計画により三里浜一帯は公園指定を解除された。
写真112 越前海岸

写真112 越前海岸

 県の行政組織には、戦前には観光事務を主管する独立した部課の設置はなく、おもに自然景観の保護を所掌する内務部土木課があるにすぎなかった。四七年二月には、新設された土木部計画課がこれを引き継ぐものの、観光の普及・進展が地方経済の発展に重要な役割を果たしていることが認識されはじめ、また政府においても「温泉法」(四八年七月)、「国際観光ホテル整備法」(四九年一二月)など観光に関する法律が整備されるにおよび、同事業の推進が重要視されはじめた。五一年二月には知事の諮問機関として福井県観光審議会が設置され(県告示第五三号)、また五七年六月に前記の計画課は計画観光課に改組されて、観光振興の体制を整えるにいたった(福井県総合開発審議会『現況分析観光部門』)。五六年にまとめられた『福井県経済振興五ケ年計画案』では、観光施設を「重要な資源」とし、交通機関や宿泊施設の充実、劣悪な道路事情の改善を問題点としてあげるなど、観光事業を産業開発の一環に位置づけている。
 民間においても四六年六月、全日本観光連盟が結成されたことをうけて、福井県も福井商工会議所内に福井県観光連盟を結成し、翌年秋には県民投票によって「福井一〇景」を選ぶなど、観光客の誘致・宣伝につとめた。また各市町村でも、四七年ころから観光協会の活動が活発化し、五二年の福井復興博覧会ではパンフレットを配布するなどして「観光地福井」をアピールした(『大正昭和福井県史』下)。



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