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 第六章 「地方の時代」の諸問題
  第二節 諸産業の展開
    五 商業の変革と動向
      福井市中央卸売市場の開設と卸売業者の収容問題
 中央卸売市場は、腐敗しやすい生鮮食料品を公正な取引によって適正な値段で消費者に供給すること、また生産者には継続的で安定した販売ルートを確保することを使命にしている。福井市では一九七四年(昭和四九)一一月に中央卸売市場が開設された。その中央卸売市場は、総工費約三七億円、福井市大和田町におよそ一四万一〇〇〇平方メートルの敷地を確保し、青果部、水産物部、花卉部の三部門が設置された。
 中央卸売市場の開設において、どの都市でも問題となるのは卸売人(卸売会社)の収容方法である。この問題は、卸売人を一つとすべきか、あるいは二つ以上とすべきか、その方法をめぐって問題となったため、一般には卸売人の単複問題といわれる。福井市では青果、水産とも当初は卸売人を一名とする案を立てた。業者側も一卸売人とする計画であった。ところが農林省より卸売人は複数とすべきであるという強い指示が出され、福井市は結局それぞれ二社で出発することになった。
写真111 福井中央卸売市場 

写真111 福井中央卸売市場 

 農林省は卸売人の収容方法について、戦後しばらくの間卸売人を一会社とする単数制を基本方針としていた。しかし、六六年の金沢市中央卸売市場の開設期に発生した卸売人の単複問題を契機に、農林省はその方針を複数制に変更した。「独占禁止法」を管轄する公正取引委員会が卸売人の単数制を独占禁止法に抵触するおそれがあるとしたからである(斎藤義一「中央卸売市場における卸売業者の合併と卸売市場法及び独禁法」・『農業市場研究』41)。そのため福井市の中央卸売市場の開設にあたっては、農林省は卸売人を複数制とすべきことを指示してきた。県議会において農林部長はつぎのように述べている。
  私どもも一社でいいんじゃないかというようなことで、中央ともそういう折衝をしてまいっ
  たわけでございます。しかしながら……国のほうで複数でやれという、非常にきびしい
  指示がございました。これは、さらに農林省だけではなくして、公正取引委員会からも、
  そういう非常に強い指示があったわけでございます(『第174回定例福井県議会会議録
  』)。
 福井市の中央卸売市場では水産物部門に福井水産株式会社と福井中央魚市株式会社の二社、青果部門では、福井青果株式会社と福井マルカ株式会社の二社が設立された。ただ花卉部門のみは株式会社福井中央花卉市場の一社のみが収容された。



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