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 第六章 「地方の時代」の諸問題
  第二節 諸産業の展開
    五 商業の変革と動向
      大手量販店の進出
 大都市では一九六〇年代後半にスーパーの大型化が進展し、百貨店も含めて大資本同士の競争が激しくなった。そのためこのころより大資本は、店舗展開の対象地として地方都市に関心をむけるようになった。なかでも北陸地域は消費購買力水準が高い地域であるとして、大都市の大手スーパー資本にとっては有望な進出地域であるとみなされた。そのため七〇年代における北陸地域のスーパーの展開は急激なものとなった。表174に示したように、スーパーは、店舗数で一・八四倍、売上高では三・五九倍の増加を示し、北陸地域は首都圏についでスーパーの展開の激しい地域となったのである。そのなかで福井県は店舗数、売上高の増加とも・・・・もっとも高い数値を示している。福井県は、七〇年代に大型店の成長が急激であったことがうかがわれる(村上研二「スーパーストアの動向」、伊藤喜栄「小売商業の地域的特性とスーパー立地―東海・北陸の対比において―」『地理』24―10)。

表174 北陸地域におけるスーパーの展開状況

表174 北陸地域におけるスーパーの展開状況
 福井県における大型店の展開は福井市においてもっとも顕著であった。大型店は、七〇年代初頭まではすべて県外資本の進出によって行われた。県外資本の進出は、一九六二年(昭和三七)の加藤ビルディング百貨店の開設計画にはじまる。この百貨店の開設では当初核店舗として高島屋(本社大阪)が考えられたが、地元側の反対もあり、核店舗をのぞいて寄合百貨店として開設された。したがって、この時は県外資本の進出はくい止められたといえる。しかし六七年九月には大手量販店のほていや(のちのユニー、本社名古屋)が福井駅前に進出した。ほていやは翌六八年九月にも駅前に二号店を開店した。また七一年四月にはジャスコ(本社大阪)が福井駅前のファッションランド・パルに進出した。同年一〇月には、地元の百貨店だるま屋も増床を申請した。
 福井駅前は、あいつぐ大手量販店の進出によって競争が激しくなった。だるま屋は、西武百貨店(本社東京)と業務提携を結び、「東京ファッションの高級衣料」を主力商品として導入することを決定した(『福井新聞』45・11・7)。これに対して、ほていやも増築を計画し北陸地域ではじめてのインテリア部門への進出を企図した(『北陸中日新聞』45・12・3)。このため福井駅前はあたかも東京、大阪、名古屋の「三大資本」が激突したかの感を呈したといわれる(『毎日新聞』46・3・6)。



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