目次へ  前ページへ  次ページへ


 第六章 「地方の時代」の諸問題
  第二節 諸産業の展開
    五 商業の変革と動向
      流通革命とスーパーチェーンの展開
 高度経済成長期に小売部門であらたに発展したスーパーマーケット(スーパーと略)資本は、国内の消費市場の拡大と個人消費支出の増大に対応して、急激に成長をとげた。このスーパー資本の成長は、一九七二年(昭和四七)に、それまで小売業において売上高シェアで首位を占めていた百貨店を追い抜いて、そのトップの座を占めるにいたった。この年は小売商業における戦前型小売商業構造からの決定的転換、換言すれば小売商業における戦後段階を決定づける画期とされる(中野安「低成長経済と巨大スーパーの動向」大阪市立大学『季刊経済研究』2―3)。
 日本におけるスーパーは、五三年に東京青山でセルフ販売方式を導入して開店した紀ノ国屋が最初のものである(平松由美『青山紀ノ国屋物語』)。以後国内各地にスーパーが開設されるが、福井県では五六年に福井市内に開設されたハギレヤが最初であった。その後福井市の呉服町商店街の有志によって開設された福井主婦の店をはじめ、いくつかのスーパーが開設されたが、六三年以降にはスーパーチェーンの展開がみられた。同年九月、食品スーパー・ユースが福井市内に北店を出店して以後、多店舗展開をはかり、その後まるまん、ヤスサキなどが続いた。衣料品部門では六二年に任意組合として出発した福進チェーンが、六八年に協同組合を組織しチェーン化を進めた。六九年には農協(くみあいマーケット)、またダイコーチェーンとフクエイチェーンが合併してハニーチェーンを組織し食品スーパーのチェーン化を進めた。
 表173によれば、福井県のスーパーの開設状況は、ほぼ全国の動向と同じく、六二、三年と六〇年代後半に集中している。また福井県では全体の半数以上が福井市で開設された。福井市内のスーパーは福井駅前近くの商店街などにも開設されたが、松本、花月、乾徳、文京、大宮などの新興住宅地に食品スーパーとして開設されるものが多かった(福井商工会議所商工相談所・福井県商店街振興組合連合会『福井市内スーパーマーケットの実態』)。のちに食料品スーパーとして北陸で最大の規模を誇ることになるユースは、六三年にはじめて店舗を開設して以降、六〇年代には福井市を中心に九店舗を開設し、六九年には鯖江市に店舗を開設し、その後県下に数多くの店舗を展開する(『ユースグループ企業概要』)。

表173 福井県下のスーパーマーケット

表173 福井県下のスーパーマーケット



目次へ  前ページへ  次ページへ