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 第六章 「地方の時代」の諸問題
  第二節 諸産業の展開
    四 石油危機下の工業と減量経営
      製造業の変化
 石油危機下の日本の産業は、輸出ドライブのかかった発展構造に変わった。インフレの調整が進まない先進国、急速な経済発展を示す東アジア、さらに石油輸出稼得に依存する中東といった海外市場への進出が一段と進んだのである。「集中豪雨型」とよばれた日本の輸出の急増は、先進国市場でさまざまな貿易摩擦問題を引き起こすとともに為替の円高基調をもたらしたが、これらは日本の競争力を阻害するものとはならなかった。むしろ第一次石油危機直後から開始された減量経営を徹底し、「全員参画経営」の旗印のもとに労使協調による企業競争力の強化をはかるための外的圧力となったのである。こうした特徴は、とりわけ自動車・家電・半導体などの組立加工型産業に顕著にみられたが、これらの産業の急成長は関連部品の組立・加工分野へもおよび、これは地方の製造業の構成に大きな変化をもたらしたのである。
 表170により、県下の各産業の一九七〇年(昭和四五)と八五年の製造品出荷額等の伸び率をみてみよう。全製造業平均の四・二二倍を基準として、上位(六倍以上)・中位(三・〜・六倍未満)・下位(三倍未満)に分類すると、上位には電気機械(一二・〇五倍)を筆頭に、以下輸送機械、石油・石炭、衣服、出版・印刷、精密機械、金属、家具が、中位には鉄鋼業、窯業・土石、ゴム、非鉄金属、一般機械、紙・パルプ、食料品、そして下位には化学、繊維、木材・木製品がそれぞれ該当している。
 従来から福井県は、全製造品出荷額に占める繊維製品出荷額の比率が他の都道府県と比べると圧倒的に高く(たとえば六五年は四九・七%で、二位は石川県の三五・三%)、この点は八五年においても変わらなかったが、この間の伸び率は低く、急速に比重が低下した。八五年以降、輸出競争力の低下と後発国の追上げ、産油国の購買力の停滞に急速な円高が加わり、八七年には電気機械に首位を明け渡すことになる。一方、伸び率上位の産業は、石油・石炭、衣服、出版・印刷、家具などのように国内の消費の高度化に対応して伸びた分野と、電気機械、精密機械(大部分が眼鏡枠)、輸送機械、金属などのように直接・間接の輸出商品としての伸びが大きかった分野に分かれる。伸び率中位の一般機械も含めて後者の成長は、さきに述べた日本の輸出産業の急速な発展に対応したものであり、いわば全国的な規模での産業構造の転換のなかに福井県の産業も巻き込まれたのである。
 そこで以下では、この期の変化の著しい、いわゆる機械工業(金属加工、一般機械、輸送機械、電気機械)と、精密機械に分類される眼鏡枠工業の、それぞれの動向について眺めてみる。



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