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 第六章 「地方の時代」の諸問題
  第二節 諸産業の展開
    一 「地方の時代」の福井県経済
      産業構造の変化
 それでは、こうした経済格差の是正の背景に何が生じたのだろうか。福井県の産業構造の変化からみてみよう。図68は福井県の産業別県内総生産(総付加価値)について、第一次産業(農林水産業)、第二次産業のうち製造業および建設業、第三次産業(商業・サービス業・その他)の構成の推移についてみたものである。
図68 産業別総生産構成比(1967〜85年度)

図68 産業別総生産構成比(1967〜85年度)

 まず第一次産業の比率は、一九六七年(昭和四二)に一六・四%を示していた数字が六〇年代末に急減し、七一年には一〇%を割って八・九%となる。七〇年代は低下が緩やかになるが、七〇年代末からふたたび低下の速度が増して八三年には三%台に落ちる。第二次産業のうち製造業は、六〇年代末から七〇年代はじめにかけて構成比を高めており、七三年には三〇・二%となる。しかしこれをピークとして、第一次石油危機に落ち込み、その後いったん持ち直すものの第二次石油危機でふたたび比率を下げ、八〇年代前半には二五%台と六〇年代なかばの水準に戻っている。建設業は七〇年代に比率を高めて九%台を推移するが、七九年の一〇・一%をピークとして八〇年代に入ると七%台まで落ちている。一方、第三次産業は七〇年に五〇%をこえた後、長期的に比率が上がり、八〇年代前半には六五%をこえた。
 こうした福井県の産業別構成比の推移を大都市圏(東京・神奈川・愛知・大阪・兵庫)、および東北六県と比べてみよう。第一次産業については大都市圏では七〇年代以降一%以下となりほとんど無視し得る比重となるのに対し、東北では七〇年に一八・四%と二〇%を割り八〇年代には一〇%を下回る。後者は福井県に比べると第一次産業の比重がつねに数ポイント高いが、全国的な下落傾向と軌を一にしている。また第三次産業は、七〇年に大都市圏で五四・二%、東北で五六%、八五年に大都市圏で六五・六%、東北で六四・六%と、全国的に同じように構成比を高めている。これに対して第二次産業の動きはそれぞれ異なっている。製造業は、大都市圏では六〇年代末までは三七%台を推移していたが、七〇年代前半に急速に比率を下げて、以後三〇%を若干上回る水準で推移する。一方、東北は六〇年代なかばの一〇%台前半から一貫して比重の増加が生じており、八五年には二〇・一%となっている。したがって、前者の傾向的低下と後者の傾向的上昇がみられ、福井県はその中間に位置することがわかる。また建設業は、大都市圏では七〇年代前半に七%台を示すものの、その前後はおおむね六%台を推移する。これに対して東北は、福井県における構成比をつねに約一ポイント上回るかたちで同様の推移を示している(日本銀行『都道府県経済統計』)。



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