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 第六章 「地方の時代」の諸問題
  第一節 地域開発施策の展開
    四 福祉・同和行政の推進
      「福祉元年」
 一九七〇年代初頭は、老人医療費支給制度の導入をはじめとして各種の社会保障政策が次々に実施された時期であった。「活力ある福祉社会のために」という副題が付された一九七三年(昭和四八)の政府の「経済社会基本計画」では、同年を「福祉元年」として「経済成長の成果を社会のすべての階層に対していきわたらせ、ゆとりある生活の基盤を確保する」ことを打ち出していた。
 福井県においても、六〇年代後半には国や県に先がけて独自で高齢者の医療費の自己負担分を公費負担(「無料化」)とする自治体がでてきた。小浜市では、六八年四月から八〇歳以上の老人医療費の無料化(国民健康保険加入者のみ)を実施し、福井市でも七一年一月から八〇歳以上のすべての社会保険加入者に対して実施した。こうした動きは、同年八月までに年齢制限はさまざまであるが敦賀市、三国町、芦原町、和泉村、今庄町、美浜町に広がっていた(『福井新聞』70・12・29、71・8・5)。
 こうした自治体の動きを背景に、中川県政が二期目に入った七一年一〇月には、県は七〇歳以上の医療費を市町村と二分の一ずつ負担する制度を実施した。七二年六月の「老人福祉法」改正によって、すでに老人医療費の無料化は日程にのぼっており(七三年一月施行)、この時点までに国に先行して老人医療費の無料化を実施した都府県は二八を数えていた(『日本経済新聞』71・12・22)。
 あわせてこの時期には、老人医療費に続いて乳幼児医療費を無料化する自治体が北海道・東北を中心に増加しており、県内でも七二年一〇月には三国町、芦原町、和泉村(三歳児未満)、今庄町、敦賀市で零歳児の医療費無料化を実施していた。くわえて重度障害児の医療費を無料化する自治体も現われていた。乳児医療費については、七三年七月から所得制限つきで県が市町村の助成額の二分の一を負担することになった(『朝日新聞』72・9・29、『福井新聞』72・10・5、12・14、16、73・6・26)。
 さらに七三年には、医療保険(被用者保険)の家族給付率が五割から七割に引き上げられ、高額医療費支給制度が新設された。また年金の物価スライド制の導入も実施され、七五年にかけて「失業保険法」の廃止と「雇用保険法」の制定や生活保護給付内容の改善なども行われ、まさに福祉元年としての社会保障制度の大きな改正が実施されていた。



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