福井県を含む北陸地方は、世界的にも有数な多雪地帯である。これは、いわゆる「西高東低」の冬型の気圧配置にともない、上層の強い寒気と、シベリア寒気団の変質により昇温・湿潤化した下層大気との間に気層の不安定化が生じ、大きな上昇気流が発生することによる。一般に石川県輪島上空約五五〇〇メートルの気温がマイナス三五度(摂氏)以下になると、福井県でも豪雪が発生するといわれている。一九六三年(昭和三八)一月の「三八豪雪」は、大きな被害をもたらし、社会的機能もまた大きく損われた。交通機関をマヒさせ、産業活動や日常生活にさまざまな制約を加える「雪害」に対しては、積極的な克服が必要となったのである。
政府は、総合的な防災行政の整備をはかるため、六一年に「災害対策基本法」を制定し、都道府県および市町村にそれぞれの防災会議を設けて、防災計画の作成・実施と災害時の応急対策にあたることを義務づけた。また六二年には、積雪のとくに多い地域の産業振興と民生の安定・向上をはかる目的で「豪雪地帯対策特別措置法」が施行されたが、具体的な実施段階にはなかったのである。
六二年末よりまとまって降り出した雪は、翌六三年一月には本格的な大雪の様相を呈しはじめた。とくに一月中旬から下旬にかけての降雪は連続的であり、平年値を下回る気温と、二〇日間にわずか一一・四時間の日照時間という気象条件によって、そのほとんどが蓄積した。次々に降り積もる雪は、一月三一日ついに福井市で二一三センチメートルに達し、一八九七年(明治三〇)福井気象台創設以来の記録となった(図55)。また、翌二月一日には、敦賀市でも一五四センチメートルの最深積雪量を記録した。 |